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第67回 「ラニ」

2016.10.14
 9月11日、今年の日本ダービー馬マカヒキ(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)がフランス・シャンティイ競馬場で行われたニエル賞(GⅡ、芝2400㍍)に出走し、見事に優勝した。スローペースの前半をうまく折り合い、残り400㍍勝負の上がりの競馬を制した。
 日本ダービー馬が海外に遠征して勝ち星を挙げたのは2013年にキズナ(牡3歳、栗東・佐々木晶三厩舎)が今回と同じニエル賞を勝って以来3年ぶりのことだった。

 中央競馬初の海外遠征に挑んだハクチカラを皮切りに、日本ダービー馬はマカヒキまで13頭が海外遠征している。

 このうちハクチカラ、オルフェーヴル、キズナ、そして今回のマカヒキと4頭が勝ち星を挙げているが、残念なことに、まだGⅠレースでの勝利はない。マカヒキが次に出走を予定している凱旋門賞ではぜひとも、いい結果を出してほしいものだ。

 その凱旋門賞で日本にいながら馬券が買えるようになる。今年の競馬界の最大のニュースだろう。この号が出る頃にはすでに凱旋門賞の結果は出ているはず。マカヒキはどんな成績だったのか、海外馬券の売り上げはどれほどだったのか、気になるところではある。

 それとは直接の因果関係があるわけではないが、今年は例年以上に日本馬が海外で活躍している。

 先陣を切ったのはラニ(USA)(牡3歳、栗東・松永幹夫厩舎)だった。3月26日にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイのメイダン競馬場であったUAEダービー(GⅡ)で、日本調教馬として初優勝を果たした。ダート1900㍍で勝ち時計は1分58秒41。2着馬に4分の3馬身差をつけた。

 ラニはこの後、米国に転戦。ケンタッキー・ダービー9着、プリークネスS5着、ベルモントS3着と3冠レースを完走した。日本調教馬が米国3冠レースをすべて走りきったのはラニが初めてだった。

 ラニに続いたのはリアルスティール(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。ラニと同じ日、メイダン競馬場でドバイターフ(GⅠ、芝1800㍍)に挑み、英国調教馬ユーロシャリーンに半馬身差をつけ、先頭でゴールした。3歳時は皐月賞と菊花賞で2着、ダービーは4着とあと一歩届かなかった自身初のGⅠレース制覇を海外で達成した。

 5月の香港ではモーリス(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)が躍動した。シャティン競馬場であったチャンピオンズマイル(GⅠ、芝1600㍍)に遠征し、モレイラ騎手とのコンビで完勝した。昨年6月の安田記念に始まり、マイルチャンピオンシップ、香港マイルと破竹のGⅠレース4連勝を飾った。

 日本調教馬の快進撃にダメを押したのがエイシンヒカリ(牡5歳、栗東・坂口正則厩舎)だった。フランス・シャンティイ競馬場で5月24日にあったイスパーン賞(GⅠ、芝1800㍍)に武豊騎手とともに出走し、なんと2着馬に10馬身差をつける圧勝劇を演じた。

 直後に発表されたロンジン・ワールドベストホースランキングでは129ポンドのレーティングを獲得して、世界ランキング1位に躍り出た。その座は9月に米国のカリフォルニアクロームに抜かれるまでキープした。

 エイシンヒカリと帯同したエイシンエルヴィンもフランスのモントルトゥ賞(L)で優勝し、こんなところにも「ヒカリ効果」があった。

 そしてマカヒキのニエル賞と同じ日、韓国のソウル競馬場で行われたコリアカップ(韓国GⅠ、ダート1800㍍)ではクリソライト(牡6歳、栗東・音無秀孝厩舎)が快勝した。海外遠征のノウハウが蓄積され、日本調教馬の能力向上と相まって、遠征先でもきっちりと実力を発揮できるようになったのが結果に結びついている。

 米国や韓国。これまで日本調教馬が実績をあげていなかった場所でも着実に成績を残している。日本調教馬の進化は止まらない。

 そうした中、JRAは米チャーチルダウンズ社との提携でケンタッキー・ダービーに出走するためのポイントを日本国内で取得できる契約を結んだ。対象レースは2歳11月のカトレア賞(東京ダート1600㍍)と3歳2月ごろのヒヤシンスS(東京ダート1600㍍)。4着までに入れば、ケンタッキー・ダービーに出走するためのポイントを与えられる。いずれもラニが出走したレースだ。

 チャーチルダウンズ社との提携で世界への道はさらに広がった。他国の主催者との、こうした関係はこれからも新たに構築されるだろう。
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