JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第70回 「西高東低」

2017.01.06
 先月号の「せん馬」の話題で取り上げたタガノトネール(6歳、栗東・鮫島一歩厩舎)がチャンピオンズカップを目指していた調教中に故障を起こし、予後不良になってしまった。冥福を祈りたい。
 タガノトネールの無念が通じたのか、同じせん馬のサウンドトゥルー(6歳、美浦・高木登厩舎)がチャンピオンズカップで優勝を果たした。前身のジャパンカップダートを含め、せん馬の優勝は2003年の米国調教馬フリートストリートダンサー以来、13年ぶり史上2頭目のことだった。そして何より驚いたのは、関東馬の優勝が2002年のイーグルカフェ(USA)以来だったことだ。ダート界における西高東低は思っていた以上に長引いていた。

 改めてチャンピオンズカップの歴史を振り返ってみたい。

 同競走は2000年、ジャパンカップダートというレース名でスタートした。舞台は東京競馬場のダート2100㍍だった。第3回の2002年は東京競馬場が改修のため中山競馬場のダート1800㍍に場所を移して行われた。この年、茨城県美浦トレーニング・センターの小島太厩舎に所属するイーグルカフェがランフランコ・デットーリ騎手を背に頂点に立った。2着にも大久保洋吉厩舎のリージェントブラフが入り、関東馬が1、2着を独占した。関東馬の上位独占は後にも先にも、この1回だけだ。

 第4回から第8回までは再び東京競馬場のダート2100㍍に戻った。第9回の2008年からは阪神競馬場のダート1800㍍に替わった。ベルシャザールが優勝した2013年まで同じ阪神競馬場で開催が続けられた。

 現在のチャンピオンズカップという名称になった2014年から中京競馬場のダート1800㍍で開催されるようになり、現在に至っている。左回りのダートコースならば、米国からの遠征馬の出走が期待できるという思惑がある。

 第1回からの勝ち馬を順に挙げる。馬名の後ろの(西)は関西馬、(東)は関東馬、(外)は外国調教馬を表す。

 ウイングアロー(西)、クロフネ(USA=西)、イーグルカフェ(東)、フリートストリートダンサー(外)、タイムパラドックス(西)、カネヒキリ(西)、アロンダイト(西)、ヴァーミリアン(西)、カネヒキリ(2勝目=西)、エスポワールシチー(西)、トランセンド(西)、トランセンド(2連覇=西)、ニホンピロアワーズ(西)、ベルシャザール(西)、ホッコータルマエ(西)、サンビスタ(牝馬=西)、そしてサウンドトゥルー(東)となる。

 イーグルカフェからサウンドトゥルーまで関東馬は13連敗し、ホッコータルマエが優勝した2014年には、ついに関東馬の出走馬がゼロになるというところまで追い詰められていた。

 雲行きが変わったのは2015年だ。優勝こそ関西馬のサンビスタにさらわれたものの、ノンコノユメが2着、サウンドトゥルーが3着、そしてロワジャルダンが4着と3頭の関東馬が上位に食い込む健闘を見せた。

 中央競馬では現在、ダートの重賞レースは年間15レースが組まれている。

 2013年と2014年の2年間は、関東馬がこのうち1勝を挙げたのみという結果に終わっていた。それが2015年にはノンコノユメなどの活躍によって年間4勝というところまで巻き返してきた。

 そして2016年はチャンピオンズカップを終え、最後のカペラSを残した時点でショウナンアポロン(マーチS)、ノボバカラ(プロキオンS)、グレンツェント(レパードS)、リッカルド(エルムS)、サウンドトゥルー(チャンピオンズカップ)と関東馬は5勝を挙げている。関西馬がダート戦線を独占してきた状況は少しだけ変わりつつあるようだ。

 2017年が明けると、2月19日にはダートのGⅠレース・フェブラリーS(東京競馬場、1600㍍)がある。こちらはチャンピオンズカップ以上に関東馬にとっての鬼門になっている。最後の優勝はなんと1998年のグルメフロンティアまでさかのぼる。21世紀に入って未勝利というのは、あまりにも不名誉な記録だ。フェブラリーSの高い壁を突き破る関東馬の出現が待たれる。
トップへ