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第90回 「千六」

2018.09.12
 8月12日に新潟競馬場で行われた第53回関屋記念は1番人気に支持されたプリモシーン(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)が芝1600mを1分31秒6で駆け抜けて優勝した。1月に3歳牝馬限定のフェアリーS(中山、芝1600m)を制して以来、重賞レース2勝目となった。
 「夏は牝馬」という格言があるように、暑い季節には牝馬が好成績を残している。関屋記念も例外ではなく、牝馬の活躍が目立つ。今年も含めた過去30回の関屋記念で、牡馬は350戦して22勝の勝率6分3厘なのに対し、牝馬は102戦8勝で勝率7分8厘と高い勝率を誇る。しかも今年は2着のワントゥワン(5歳)、3着のエイシンティンクル(5歳)と上位を独占してみせた。今年の暑さは特に厳しかった。

 ただ今回の関屋記念の結果は性別のせいではなく、種牡馬が要因だろうと僕は考えている。改めて関屋記念の結果を分析すると1着のプリモシーン、2着のワントゥワン、3着のエイシンティンクルは、いずれもディープインパクトを父に持つ。同じくディープインパクトを父に持つリライアブルエースも6着、ベルキャニオンも9着になっている。

 ディープインパクト産駒は2010年のデビュー以来、関屋記念までJRAの重賞レースで175勝を挙げている。これはその父サンデーサイレンス(USA)の311勝に次ぐ歴代2位の記録だ。この175勝を距離別に見ると、46勝の1600mが1位で、43勝の2000mが2位、34勝の1800mが3位という順になる。ディープインパクト産駒は2011年のマルセリーナからジェンティルドンナ、アユサン、ハープスターと桜花賞で4連覇したようにマイル戦に強い。

 ディープインパクト産駒が今回のようにJRA重賞で上位3着までを独占したケースは合計15回あるが、芝1600m戦は今回の関屋記念と2014年のマイラーズCの2回だけだ。この時は1着ワールドエース、2着フィエロ、3着エキストラエンドと牡5歳勢が上位を占めた。

 15回のうち6回を占めるのが芝1800m戦だ。
■ 2012年きさらぎ賞 ①ワールドエース②ヒストリカル③ベールドインパクト
■ 2012年毎日杯 ①ヒストリカル②マウントシャスタ③スピルバーグ
■ 2012年ローズS ①ジェンティルドンナ②ヴィルシーナ③ラスヴェンチュラス
■ 2015年エプソムC ①エイシンヒカリ②サトノアラジン③ディサイファ
■ 2016年きさらぎ賞 ①サトノダイヤモンド②レブランシュ③ロイカバード
■ 2017年毎日王冠 ①リアルスティール②サトノアラジン③グレーターロンドン

 勝つことの適性と上位を独占する場合の適性は違うということだろうか。

 それにしても種牡馬ディープインパクトの威力は強烈だ。重賞の1~3着独占はこれで15回目。このうち3回は4着までを占めている。ライバル種牡馬のキングカメハメハが重賞の上位3頭独占をしたのはわずか2回しかない。ディープインパクトの2018年の種付料が4,000万円になったのもうなずける快進撃だ。

 だが上には上がいる。ディープインパクトの父サンデーサイレンスだ。

 産駒のJRA重賞での1~3着独占は合計24回。ディープインパクトの15回を大きく上回る。この24回のうち4回は1~4着独占、2回は1~5着独占、そして2005年のクイーンSではレクレドール、ヘヴンリーロマンス、チアフルスマイル、デアリングハート、エルノヴァ、フィヨルドクルーズと1~6着までを占めた。

 ディープインパクト産駒のワグネリアンが今年のダービーを制した。ディープインパクト産駒のダービー制覇はディープブリランテ(2012年)、キズナ(2013年)、マカヒキ(2016年)に次ぐ4度目となった。それでもまだ、サンデーサイレンスがマークした6度の優勝には2勝及ばない。これだけディープインパクトが頑張っても、まだ父を超えてはいない。
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