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第15回 ダービー それぞれの特別な思い

2011.06.10
 この原稿が掲載される頃には,第78代の日本ダービー馬が誕生しているのでしょう。ダービー,この言葉の奥に秘められた様々な思い。毎週,トレセンでの取材をしていても,このダービーウィークだけは,年に1回のみ醸し出される独特な空気が存在します。
 GⅠレース特有の研ぎ澄まされた空気に加え,童心に戻ったようなワクワク感。そう,待ちに待ったお祭りの日が,やっとやってくるような...。そして数々の道のりを乗り越え,18頭の枠を勝ち取った馬の関係者,そして騎乗する騎手たちの会話に,ダービーへの思いというのはそれぞれに深く,個々に歴史が刻まれ,そして競馬の世界においてダービーの日というのは,「一年の終わりであり,始まりの日でもある」と認識させられます。

 例えば蛯名正義騎手。蛯名騎手は,ダービーが終わるまで,2歳馬の背中には決して跨らないのだそうです。ですからこの時期,2歳馬のトレーニングを始めた陣営に,「2歳っ仔に乗ってよ」と依頼を受けた際も,「ダービーが終わってからにします」と,返答しているとのこと。「やはり2歳に跨る時は,この仔が来年のダービー馬かなぁ?という思いの中で騎乗する。だから,その年のダービーが終わるまでは,気持ち的にも次へはいけない」と蛯名騎手。

 その言葉,そしてその姿勢に,ダービーというレースに対する意識の高さを,改めて感じました。

 そして今回,皐月賞を勝って挑む池添騎手にも,ダービーに対する思いというのは,特別なものがありました。池添騎手がはじめてダービーに騎乗したのが,2001年のスキャンボーイ。この頃は,「ダービーを勝ちたいです」と,周囲にも話しをしていたようですが,その後,乗れば乗るほど,ダービーというレースの壁の厚さに,「軽々しく,ダービーを勝ちたいなんて言えない」と思ったとのこと。そして初騎乗から9年後の昨年,ゲシュタルトで挑んだダービーで,「一瞬先頭にたちかけ,ようやくレースに参加することができた気がした」と振り返った池添騎手。

 その経験を踏まえての2011年の日本ダービーは,皐月賞馬としての参戦とあって,相当な重圧の中での騎乗となることでしょう。

 しかしレース前,池添騎手は,「今回は,ダービーを勝ちたいと口にすることができます。ダービーを勝ちたいです」と,力強く発言。新馬戦からコンビを組み続け,折り合いや口向きの課題を克服してきた愛馬との絆,兄・ドリームジャーニーから強く結ばれた陣営との信頼関係,そして3馬身差の圧勝を見せて勝利をした皐月賞。全ての経験が,今ひとつに結ばれ,挑む第78回・日本ダービー。池添騎手が愛馬とともに,どんなレースを演出するのか?楽しみでなりません。

 それにしても,日本ダービーというのは,いろいろな名言がうまれるものですね。

 私の中で印象に残っているのが,2000年,アグネスフライト・河内騎手の言葉。河内さんは,将棋の駒にたとえ,「これまで数々のGⅠを勝たせてもらってはいたのだけど,ダービーを勝ったことで,ようやく『王』が手に入り,将棋の駒が全て揃った思い」と話されていました。

 まさに頂点が決まる日,それが日本ダービーなんですね。

 それではまた来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでした。
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