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第22回 2011年輝いた馬と人~水色と赤の勝負服~

2012.01.17
 この記事が掲載される頃には、2012年がスタートし、新たな年の始まりを、それぞれの思いの中で迎えているのでしょうね。
 振り返ると、2011年は想像もしていなかったことが次から次へと起こり、個としてはもちろんのこと、社会という大きな枠組みの中の一員という認識のもと、様々なことを考え、また見つめ直す年だった気がします。

 その2011年を踏まえた上で、「この2012年をどう生きるべきなのか?」という問いを、常に自分自身に語りかけながら過ごしていくようにしなければならないと感じています。

 さて競馬の世界ですが、2011年を振りかえると、突出して活躍が目立った騎手、厩舎、そしてオーナーがいらっしゃったなぁ~という感想を持ちます。

 騎手で言えば、オルフェーヴルでの史上7頭目の3冠馬誕生を成し遂げ、スプリンターS、マイルCSも制した池添謙一騎手。

 厩舎で言えば、そのオルフェーヴルを管理される池江泰寿厩舎と、トランセンドで初となるJCD連覇を飾り、スプリンターズSでのカレンチャンなど10以上の重賞勝利を収めた安田隆行厩舎。

 オーナーで言えば、トランセンド・アーネストリー・トレイルブレイザー・モンストールの前田幸治氏ではないでしょうか?

 ですから先日、大阪でタクシーに乗った際も、「昔は馬で買っていたんですが、最近は、勝負服と騎手と厩舎で選ぶんですわ~」と、競馬好きの運転手さんの言葉に、妙に納得してしまいましたぁ。そしてその中でも特に印象的だったのが、前田オーナーと競馬関係者の間に築かれている温かみとプロフェッショナルな緊張感が混じる信頼関係。

 例えばトランセンド、今でも忘れられないのが、GⅠレースを勝利する前の船橋競馬場で行われた日本TV盃でのこと。逃げて2着となったレース後、パラパラと雨が降る中、検量室前に立ち寄り、藤田騎手に「ご苦労さん、いいレースだった。次も頼むな」と声をかけ、すぐさま競馬場をあとにされた前田オーナー。

 アーネストリーに騎乗される佐藤哲三騎手も宝塚記念後に口にされていましたが、「負けたレースにおいても、内容を理解して下さったときには、必ず良いレースだったと声をかけてくれ、次も頼むぞと言ってくれる。その言葉に、信頼されている安心感と責任を感じ、何としてでも結果を出したい。オーナーの気持ちに応えたいと思う」と。確かに騎手にとって、負けたレース後ほど不安な思いにかられることはないと思います。

 例えば、次は自分が乗ることができるのであろうか・・・?と。いや、これはレース後のみならず、レース前においても大変に重要なことと言える気がします。というのも、重賞、GⅠレースなど、大きいところを狙える馬であればあるほど、そこに進んでいくまでの過程においては、1つの勝利以上に、内容を重視しなければならない時があります。

 例えば、3冠馬オルフェーヴルも、勝ち負けよりも折り合いにウェートをおき、レースに挑んでいた過去があるように...。しかしながら、そのことを騎手だけでなく、その馬を取り巻く全ての人々が理解をしていなければ、騎手が考えを持って挑んだとしても、負けという事実のみが浮き彫りとなってしまうことも。そしてその結果、勝ちを急いだあまり、大輪を咲かせることができないケースや、1つ1つのレースが線として結びつくことなく、点で終わってしまうこともあるように思えます。ですから、前田オーナーの「次も頼むなぁ!君に任せているから」という言葉には、計り知れないパワーが込められている、そんな風に私は感じます。特に今は、勝っても乗り替わりが当然に行われる時代ですから、なおさらその力は、騎手にとって大きな心の支えとなるのではないでしょうか。

 「馬が心を持った生き物であれば、それに騎乗する騎手もまた心を持った人間」水色と赤の勝負服が表彰台に輝くたびに、ふとそんなことを感じる年でしたぁ。

 さぁ今年は、どの馬、どの騎手、どの厩舎、どの勝負服が競馬場を彩るのでしょうね?
 ホソジュンでしたぁ。
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