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第26回 調教師という仕事とは...

2012.05.25
 今年の寒さも、桜と共に終わりを告げ、あっという間に街の色はピンクから緑に。そして競馬もクラシック第1弾となる桜花賞、皐月賞も終わり、いよいよ連続G1週へと突入。栗東トレセンも、カメラの台数が増え、普段スクリーンを通して目にしているタレントさんの姿も...。
 このシーズンというのは、週末だけでなく週中においても華やかな空気を感じます。特に今年は、阪神大賞典でのオルフェーヴルの逸走もあっただけに、6週連続G1の先陣を切る天皇賞への注目度がより増している状況下。きっと当日の京都競馬場には、たくさんの方が詰め掛け、オルフェーヴルの走りに視線を注ぐことでしょう。

 実は今、この原稿を書いているのは、天皇賞が行われる3日前なのですが、前回を踏まえての今回、池江師の考えには、阪神大賞典前との大きな違いが存在しました。それは、レースの在り方。3冠馬となり、有馬記念を制したオルフェーヴルに求められたのは、凱旋門賞参戦となり、池江師の中には、道中のポジション取りも含め、神戸新聞杯や菊花賞で見せた上手な競馬をしてほしいというものでした。ですからあえて中距離路線ではなく、長距離レースを選択し、試練を与える選択に。

 しかしこの中間、師が出した結論は、「僕は、心のどこかで馬と騎手を信じていなかったのかもしれない。だから、ポジションがどうのこうのと、僕自身の勝手な固定観念を作ってしまい、結果、それが馬と騎手を苦しめる形になってしまった...。だから、前回の逸走は、明らかに僕のミスです」と。

 凱旋門賞を意識するあまり、これまでの凱旋門賞馬たちのレース振りに近い走りを要求し過ぎたことへの反省から、今回においては、オルフェーヴルのリズムを大切にすること、その原点に戻って挑むとのこと。と同時に、師はこんなことも...。

 「阪神大賞典では、お客様も様々な状況や思いの中でオルフェの馬券を買ったことと思います。だから、逸走してしまった走りには、本当に申し訳ない思いです。しかし、もしこれまで通りのオルフェの走りをして仮に勝ったとして、そのまま海外へ行き、海外であのような走りをしてしまうことになったら...。オルフェーヴルの評判はもちろんのこと、日本の競馬そのものが、問われることになってしまっていた。それを考えると...」と。

 阪神大賞典での逸走、これは決して褒められることではありませんが、この経験から、池江師自身が調教師の立場として選択をしてきた采配を見つめ直し、キッチリと分析をし、反省。なおかつ自分のミスだったと口にされるあたりに、調教師という仕事に対する真摯な姿勢を感じ、私は感動のあまり胸が熱くなりました。と同時に、世界を目指す上において、日本のホースマンとしての心構えを持って海外に挑む姿にも、真のホースマンを感じるものでした。

 こんにちの日本競馬は、多くの馬が海外へ遠征する時代に。

 先日行われたドバイWCデーにも、多数の日本馬が参戦をしましたが、海外遠征がごくごく当たり前のようになっている時代だからこそ、日本を代表して挑む厩舎関係者にとっては、その意義と重みをもう一度しっかりと認識しなければならない、池江師の言葉と姿勢に、ふとそんなことを感じるものでした。

 さぁ幾度の試練を乗り越えてレースへと挑むオルフェーヴル、春の天皇賞での走りに注目です。

 それでは皆さん、また来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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