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第28回 アニマルコミュニケーター~理解してくれるパートナーの存在~

2012.07.19
 日本ではあまり馴染みのない、アニマルコミュニケーターという職業。その名の通り、動物と会話をする人のことなのですが、先日、ある方からアニマルコミュニケーターに関する本をお借りしました。内容は、アメリカを舞台に、犬や猫、馬など、数々の動物たちとの会話を元に、飼い主たちが困っている問題や悩み、疑問に思っていることを解決していくというもの。
 その中に競走馬も登場するのですが、不思議なことに、その話、日本でも聞くよなぁ~、あるよなぁ~と思えることがあったのです。

 それは、急に勝ちだした馬の物語。その馬のオーナーは、なぜこれまで着外ばかりだった仔が急に連勝しだしたのか?その理由を知りたいと思い、アニマルコミュニケーターに依頼。すると、「自分がビリになった時のレース後のクーリングダウンの際、別の競走馬が死んで厩舎から運び出されるところを目撃。その時、担当者が、僕も走らないと、ああいう目にあうと言ったので...」と馬の声が聞こえ、担当者にその旨を確認すると、「確かに言ったけど、あれは冗談で...。でもまさにこの仔がレースで走りだしたのは、それからだ」と、驚くのです。

 これは、私が競馬学校生の時、トレセン研修で配属された厩舎の古株の厩務員さんが、「こいつら(担当馬2頭)、最近じゃ、俺が本音で言っているのかいないのか?わかりよるわ~」というのです。何でも、可愛がっていた愛馬の成績が上がらず、別れの危機だった時期があり、悲しさのあまりに、「走らないと、お別れだぞ...」と言ったとたん、掲示板にものらなかった馬が好走し、競走馬生命が延びたというのです。

 「やっぱり馬は俺らの言葉を理解しているわ~と思ってね、これはいいと思い、それ以降、別の馬たちにも何回も使っていたら、そのうち、馬たちは話を聞きもしなくなったよ」と。

 この話、馬が走りだしたのは偶然と思う方もいらっしゃることでしょう。しかし、これと全く同じことを、結構いろんな方から聞くのです。またつい最近、私自身も不思議な体験をしました。

 それは、厩舎の解散によって、長きに渡ってコンビを組んできた担当者と離れ離れになった、ある馬のお話。新しい厩舎に移って数ヵ月後、その馬の様子を見に行くと、馬房内の小窓からジッと外を眺め、まるで誰かを探しているかのような雰囲気。その瞳があまりにも切なくて、悲しげに映り、(きっと以前の担当だった○○さんを探しているのだろうなぁ)と感じました。後日、元担当者の方に逢った際、その旨を伝えると、「実は僕も別れが辛くて、なるべくあの仔の事を考えないようにしているのだけど、つい最近、調教中に、たまたま偶然、あの仔の横を別の馬に乗って通ったら、すれ違う時に俺を見て鳴いたの。あっ、コイツ、俺ってわかってくれているんや~と思って、こっちも泣きそうになってしまった」と。

 牧場時代、あまりの気性の激しさに、競走馬にならないかもしれないと言われていた仔。その馬と格闘しながらの日々を過ごし、「やんちゃ過ぎるけど、それが段々と可愛く思えるほどになった」と、日々の成長を感じながら、ゲート試験やデビューを迎え、歩んできただけに、濃密ともいえる時期を過ごした2人の間には、確実に通いあうものがあるのでしょう。

 近年、競馬の世界も効率化が求められる傾向が強くなり、1人が2頭を担当するという従来の担当制から、厩舎全員で管理をするプール制が増えてきました。プール制の導入により、人間にとっては有休も取りやすく、収入の面においても均一化が図れるところも。また馬に対しては、1人の目でみるよりも、より多くの目で管理できるという利点があるとも言われていますが、馬との個々の対話で生まれる、より深い目という意味では、少し失われているようにも...。

 もちろんどちらが良くてどちらが悪いという話ではないのですが、もし馬が心の感情によって、行動が大きく動かされているとするならば、自分を理解してくれるパートナーの存在というものは、非常に大きなものがあるように、今回の件をもって、より深く感じました。

 皆さんは、どうお考えになりますか?
 それではまた来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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