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第38回 デムーロ兄弟のクラシック制覇~経験について考える~

2013.05.24
 牝馬・牡馬共にクラシック第1弾が終わりましたが、共に、デムーロ兄弟の力量を見せ付けられるものでしたぁ。
 まず桜花賞ですが、前日に落馬した丸山騎手に替わっての突然の騎乗依頼の中、テン乗りとは思えないほどの巧みなコントロールと、ペースを読んでの道中のポジショニング、そして当日吹き荒れる風の流れも感じていたかのような進路取りをしたクリスチャン騎手。まさにアユサンをパーフェクトなエスコートで桜花賞馬へと導いたと言っても過言ではないでしょう。

 そして続く皐月賞での兄、ミルコ・デムーロ騎手の騎乗振りも、鳥肌が立つほどの素晴しいものでした。とにかく個人的に1番驚きを感じたのは、道中のポジション。これまでのロゴタイプのレース振りからすると、この馬の持ち味は、器用さと持久力のように感じており、まさか切れ味を持つ他の有力馬たちの後ろから競馬をするということは...。

 しかもその判断は、スタート後の速い流れを読んだ上で瞬時に切りかえてのものでしたし、その後のコースロスのない道中の立ち回りは、実に完璧なもの。そして終わってみれば、レコードでの勝利に。柔軟な対応力と馬を信じての内容に、改めてミルコ・デムーロ騎手の騎乗技術を感じるものでした。

 以前、ミルコ騎手の初来日当初から彼を見てきた側近の方が、「外国人騎手が日本に来て、まず最初に学ぶことにペースがある」と話していました。というのも、ヨーロッパ競馬のほとんどは道中スローな流れであり、アメリカは逆にスピード競馬。しかし日本では、スローもあれば、ミドルもあり、そしてハイペースと、実に様々なレース展開が繰り広げられ、スタートしてみなければ分からないのが実情。だからこそ、たとえ人気薄の馬でもチャンスがあるのが日本競馬であると、理解していると...。

 まさに今回の両レースとも、流れを読んでのスタート後の対応が勝利へと繋がっており、日本競馬を熟知してのもの。
 きっとこの背景には、日本での経験値もさることながら、他国との違いを理解しているからこそ、より成しえるようにも...。

 そんな中、つい先日、リーディング上位を走る日本の30代の騎手が、テレビのインタビューにおいて、「土曜・日曜日の鞍数を絞って騎乗できることが、将来的に騎手としての理想だと思う」と話しているシーンがありました。

 個人的には、(本当にそうなのだろうか...?ましてや30代、最も脂が乗るこの時期に発せられる言葉なのだろうか...?)と首を傾げたくなる思いになりましたし、その発想こそが、現在の中央競馬における外国人騎手・地方競馬出身騎手たちの活躍を象徴しているようにも思え、何だか寂しい気持ちに...。

 しかしまたその一方で、年内いっぱいの海外遠征を決意し、現在フランスの地で過ごしている藤岡佑介騎手の行動には、頼もしさと将来への期待が広がる思いにもなりました。

 昔から「経験に勝るものは無い」と言われますが、偉大なる先輩騎手である岡部幸雄さん、そして武豊騎手が、国内のみならず、海外においても成績を収められてきたその背景には、常に世界へと目を向け、費やしてきた時間と積み重ねてこられた経験によるものなのではないでしょうか...。

 デムーロ兄弟の勝利で開幕となった今月、「経験」について考える月でもありました。

 それではまた来月、お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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