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第44回 勝ち負けはかえられない事実~内容や中身への視点も~

2013.11.21
 秋のGⅠレースも続々と行われ、気づけば中山開催そして有馬記念を迎えることとなるのでしょうね...。何だか10月に行われた凱旋門賞が、ずいぶん前のことのように感じるのだから、GⅠレースが毎週のように行われるこの季節は特に時の流れの速さを感じます。
 さてその凱旋門賞ですが、私は出産直後ということもあり自宅で観戦していましたが主人はJRAの海外研修に参加中ということもあり、現地で観戦。帰国後まず最初に口にしたのが、「どの競馬場に行ってもそうだったけど、勝った馬に対してはもちろんのこと負けた馬にも、関係者やお客さんが拍手で温かく迎えていた。それが凄くよかった」と。

 日本馬悲願の凱旋門賞がまたしても夢と終わった直後には、競馬場のあちらこちらで見知らぬフランス人に、「元気出せ」「頑張れ」といった雰囲気で肩や背中をポンポンと優しく叩かれ、気遣ってくれたとのこと。
 勝負の世界は常に勝ち負けが問われ、1着と2着の間には大きな差がうまれるもの。とかく生真面目な日本人にとっては、勝つことのみに執着するあまり負けた際の落胆振りは大きく、レース直後から負けの要因や原因を突き止めたがる傾向もあります。しかしその一方で外国人の方々は少し違った感情でレースの内容を受け止めているような気がします。

 日本でその点が特にクローズアップされたのが第63回の皐月賞だったのではないでしょうか。最後の直線、ミルコ・デムーロ騎手騎乗のネオユニヴァースと田中勝春騎手のサクラプレジデントがデッドヒートを演じ、ネオユニヴァースが勝利。ゴール直後、頭を落としうな垂れる田中勝春騎手に対し、ヘルメットを叩いたミルコ騎手。その真意は、(僕たち、こんなに素晴しいレースをしたじゃないか?!やったよね)という互いと互いの馬を褒め称える気持ちのあらわれだったのです。

 今回の凱旋門賞においてもゴール板後、スミヨン騎手がジャルネ騎手の元へ行き握手をするシーンが見受けられましたが、急遽の代打で大役を成し遂げたジャルネ騎手への敬意と共に、互いにベストを尽くした中で挑んだ証なのではないしょうか。

 そういえば以前ある番組で、小学校低学年の子供が、自分の感情を漢字で表すという企画があったのですが、その際に何かのスポーツで勝利した際にまず最初に「喜」びを感じたのですが、担任の先生の顔を見ると、(お前が勝つなんて意外な結果だ)といった驚きの表情をしており、その様子に一気に悲しくなり「落」ちこんだ。だから僕はその時の感情を「喜落」とします、と表現していました。

 ある意味、馬も言葉ではなく、その場の雰囲気で何かを察する生き物。だとすると、レースで負けた際に1番傍にいる人の感情に大きく左右されるところがあるのではないか?と思います。
 ひょっとすると負けたレースにおいても、(僕、凄い頑張ったんだよ)という思いでいたとしたら、やはり褒めてほしいものであり、そこでガッカリした様子で迎えられたら、悲しみと共にレースに対する自信を失ってしまうのではないでしょうか...。
 逆に褒められたら、その褒められたという喜びの感情が次のレースに向けてさらなる意欲となり、プラスへ働くようにも...。

 日本人気質と言われればそれまでなのですが、レースでの勝ち負けはかえられない事実。過ぎ去ってしまった過去を悔やむよりも、その内容や中身に注目をすることが、今後に向けても重要なことであり大切なことなのかもしれませんね。

 今回だって負けたとはいえ、2年連続で凱旋門賞へと挑み、1年を経て精神的な成長をしっかりと見せたオルフェーヴル。また一方、3歳馬で初の海外遠征にもかかわらず、見せ場十分の自分のレースに徹することができたキズナ。
 両馬共に素晴しい内容を世界に証明したことは紛れもない事実であり、そんな2頭に対し、世界の人々は心の底から拍手を送ったのでしょうね。
 それではまた、来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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