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第56回 表現とジェンダー~日本の馬社会の多様化には女性進出も大事~

2014.11.12
 先日、東京の日本橋にある三越百貨店で初心者向けの競馬講座に参加しました。20名近いお客様を前に競馬の仕組みや馬券の種類、新聞の読み方、マークシートの書き方などをお話させてもらったのですが、そのほとんどが20代~50代の女性。
 1時間半ほどにわたるトークの中、ほとんどの女性がメモを取りながら全てを吸収しようとする真剣な眼差しでした。

 そして講義終了後には、最近競馬を始めて虜になってしまっているという女性が、「私は横山典弘騎手というジョッキーが1番好きです。まだ競馬のことはよく分からないのですが、ジャスタウェイも横山騎手が乗った時が1番馬が輝いて楽しそうに見えました。今回の凱旋門賞、日本馬全てが残念な結果になったけど、私はゴールドシップが入場の際に歩けていたことに感動だったんです。だって、もともとは騎手を落としそうな勢いで登場してたでしょ。それがいつの間にか、あんな風になっているなんて...。しかも海外、初めての場所で」と。

 違いがわかる、その見解、実にお見事だと頭が下がりました。
 今回の凱旋門賞、日本馬3頭全てが後方からの競馬となりレース後には騎手の騎乗ぶりが問われたわけですが、ゴールドシップに関しては日本の競馬においても一筋縄ではいかない馬ですし、そもそもあのような馬場入場ができたのも横山騎手になってから。

 何度も栗東や札幌、そしてフランスへまでも調教のために足を運び、技術と対話力で真摯に馬と向き合ったからこそできたのに、その過去や過程を無視しての結果のみの見解を我々マスコミはしてしまったように思えます。

 しかもレース後にオーナーが、「日本でセオリー通りの競馬ができるようになったら、その時に参戦を考えます」と、的確なコメントもされていたのに...。今回においてもそうですが、女性の目線というのは、鋭いなぁ~と思えることが多くあります。やはりそれは、日頃から細かなところに目を配っている女性ならではの感性があるような...。

 私はJRA初の女性騎手ということで、女性・男性といったジェンダーを主とした質問を受けることが多く、そのたびに性別ではなく個で物事を捉えるべきだと反感めいた気持ちでいましたが、40を過ぎて、またいろいろな方を取材する立場となって、全てが全てとは言わないものの、やはり本質的な違いはあるなぁ~と思います。

 例えば、言葉を発するか発しないか。日本古来の美徳なのか?多くを語らずとも、理解しあえていると願う男性に対し、きちんと言葉で確認したいと考える女性。言葉を発することで摩擦も生じるゆえ女性というのは私も含め、時には衝突も避けられないわけですが、今回の凱旋門賞、連覇を成し遂げたトレヴの女性調教師であるヘッドマーレック氏は、その鞍上をジャルネ騎手にチェンジしたいと要望しての連覇。

 これは勝ったからその選択が正しかったという話ではなく、自分の意志をオーナーに対しても言葉にしたこと、そして昨年においては、「勝ったけど、ジャルネのあの騎乗はダメ!」と厳しく指摘したこと、その全てが勝ち負けだけを主とした視点ではなく、いつもぶれない目を持ち、全ては馬の為にベストを尽くした中で捉えていると思える行動・言動。素晴しく思えるのです。

 今回の日本馬、特にハープスターにおいては、その姿とは対照的な形で終わった気がしてならず、グローバル化している今日(こんにち)だからこそ、多様性という意味でも、女性の進出も含め日本の馬社会が内側から変わっていかなければならないことがあるようにも思えました。

 それでは皆さん、また来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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