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第70回 2016年の競馬を見る視点~一連の流れで、馬とどう向き合っているか~

2016.01.13
 明けまして、おめでとうございます。毎年のことながら冒頭の挨拶をこのような形で書きながらも、1月号の入稿は通常よりもかなり早く、まだ2015年12月の上旬。よってクリスマスも有馬記念も、まだ迎えていない状況です。
 この原稿が皆様のお手元に届く頃には、昨年の競馬も全て終わっていると思うと、ラストランとなったゴールドシップは、どのようなレースで競走馬人生のラストランを刻んだのか、とても気になります。

 というのも、ゲート再審査後となったジャパンカップでの姿に、これまで抱いていたヤンチャで野性味溢れる印象から、実はその逆で、人間を映し出す鏡のような馬だったのではないか?と、感じるようになりました。

 宝塚記念のゲートで立ち上がってしまった際、私も含め多くの人が、隣枠の馬のガタガタとした動きや、先入れで待たされたこと、また強いと感じる馬を威嚇したのでは?といろいろな想像をしたことでしょう。

 しかし、あのJC当日、ゲート内で微動だにせず、おとなしく中立していたゴールドシップと、こうなるのではないか?とレース前に想像をしていた横山典弘騎手から、ひょっとすると、あの宝塚記念での行動に、その時だけではない何かが存在しているように感じました。

 正しいかどうかは分かりませんが、勝利を飾った春の天皇賞の際、使う予定のなかったゴールドシップを急遽牧場から戻してから、すこぶる機嫌が悪かったというコメントが思い起こされるのです。また調教中の激しい尻ッパネなど。そして勝つには勝ったものの、その反抗心がレース前のゲート入りに表れ、そして次のレースとなった宝塚記念で爆発したようにも...。

 だからこそレース後に横山騎手は、「これまでゴールドシップに騎乗させてもらってからフランスにも通い、調教にも足を運び、自分の思うように携わらせてもらった。そして、JCがコンビ最後と認識した上で騎乗したわけだけど、細かいところを言えば幾つかあるけど、それでも自分の中では完結できたし、改めて馬は人間の向き合い方次第で変わることをゴールドシップから学ばせてもらった。それが、大きい」と話されたのではないでしょうか...。

 勝ち負けだけではない、馬とのやり取り。そして一連の流れを思い起こし、学んだと発言されるその姿は、馬に対してどこまでも謙虚であり、美しさを感じるものでしたし、その美しさが、あのJC当日の返し馬、ゲート内での姿、そして鞍上のゴーサインに応えてのスパートを見せたゴールドシップと重なるものでもありました。

 しかしながら考えてみれば、ゴールドシップに限らず、未勝利・500万下・1000万下といったクラスの馬たちの中にも、向き合いかた次第でいかようにも変わる馬がたくさん存在しているのではないでしょうか...。

 例えば、急激に好走し出す要因を紐解いていくと、その舞台裏では何かしらの人の変化も伴っており、単に馬が合う・合わないといった見方や成長期、偶然といった言葉だけで片付けてはいけない何かが存在し、またその逆も同じことで、急に走れなくなる要因の裏にも、人が関わる何かがあるのかもしれません。

 2016年は、今回のゴールドシップから学んだ、「点で見ず一連の流れで見ること」と、「携わる人が、その馬とどう向き合っているのか?」そのあたりを軸におき、競馬を見て行きたいと思います。

 それでは皆さん、今年もどうぞお付き合いのほど、よろしくお願い致します。
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