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第78回 偉大なる優しき武邦彦氏~騎手として父としてはかりしれない功績~

2016.09.13
 今年の夏は暑いですね~。熱中症で病院へ搬送される方の人数もかなり増えている様子。暑さを舐めてはいけませんし、暑い日は真面目になり過ぎず、ダラダラすることも大事なのかもしれませんね。
 私も41歳の体で、この暑さと元気盛りの2歳男児の相手は体力的に限界ギリギリ。気温もそうですが、年齢を考えても、365日いつも同じように過ごせるなんて考えない方が賢明なのかもしれないと自分に言い聞かせながら、怠け者の道を歩んでいます。

 さて話は変わり、競馬界にとって偉大な方・武邦彦さんが亡くなられました。いつお逢いしても、「いつも頑張ってるね。すごく、いいよ。」と、ニコニコされながら優しい表情で声をかけてくださいました。優しさの塊というか、優しさそのものというか、優しいという言葉そのもの。

 棺に横たわるその表情も、病で苦しんだとは思えないほど穏やかで優しさに満ち溢れており、透き通るような美しさでもありました。ただただ感謝の言葉しかありません。

 以前、千葉県の中学校で、武豊騎手が講演会をされた際に司会として参加させていただいたのですが、その時に父・邦彦さんに対し、「父は何も僕には言わない。一度も、こうした方が良いとか、あーした方がいいと言ったアドバイスもない。でも、僕のことを見ていてくれる。それを常に感じています。」と、話されていました。黙って見ていてくれるということは、息子を理解しているからこそだと、当時は理解しました。

 しかし武豊騎手が怪我をし、勝ち星や重賞から少し遠のいた際、トウケイヘイローで重賞勝ちをした時、武邦彦氏はその数週間後に清水厩舎を訪ねていたのです。そして、「先生いる?」とスタッフに声をかけると、坂路から厩舎へと戻る清水師を待ち、師の姿を見ると、手を握りながら、「お兄ちゃん(清水師)、ユタカを乗せてくれてありがとうなぁ、ありがとうね」と、何度も御礼を言われたとのこと。

 何も言わない、その背景には、自分のこと以上に息子を心配し、息子の気持ちを理解し、息子と共に耐えて見守る父の深い愛情があってのものだったと感じます。

 あの滲み出るような優しさは、耐える力、見守る力、信じる力であり、その大きな眼差しの元、武豊騎手が生まれ、そして育ち、偉大な功績を残し続けられてきたのかもしれません。

 まさに、偉大なる方 - 武邦彦氏。騎手として、父として、はかり知れないほど、多くのものを残された方。多くの方の涙が、それを物語っているような気がしました。

 しかしながら、そんな武豊騎手と対象的だったのが、「父から沢山のことを学んだ。それを今後に活かしていきたい」と語った幸四郎騎手。

 きっと誰かが、天国で、「同じ息子でも、父親の姿が正反対やなぁ~」と、微笑ましく関西弁で突っ込むと、「だって名前が幸四郎やからな。アーシロ、コーシロだから」と、ユーモアタップリに返答し、その場を笑いで和ませていそうな気がします。

 ご冥福を祈るとともに、いろいろな意味で感謝の思いでいっぱいです。
 「ありがとうございました」

 それでは皆さん、暑い日がまだまだ続きそうですが、水分補給だけでなく、暑さに身を任せて、時にはノンビリ、ダラケチャウこともお忘れなく。
 ホソジュンでしたぁ。
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