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第79回 次に繋げる仕上げ・競走・コメントとは~考える物差しが広がる~

2016.10.14
 ついこの間まで冷房が必要だった生活から、一変。寒がりの私は、早くも暖房やコタツを欲しく思える日もあります。そう言えば、コンビニエンスストアでも「おでん」が並んでおり、秋を通り越して冬を感じる瞬間も...。
 このコラムが皆様の目に触れられる頃には、秋競馬GⅠ第1弾となるスプリンターズSも終わり、毎週末行われるGⅠレースに一喜一憂して過ごしていると、気づいた頃には年末の有馬記念→クリスマス→大晦日→新たな年となっているのでしょう。

 そして最も気になるのが、日本馬にとっての悲願である凱旋門賞の結果がどうなっているのか?父・ディープインパクトから10年の時を経て、息子が父の果たせなかった夢を叶えているのか?非常に気になります。

 特に今年は、初めてシャンティイ競馬場で行われる凱旋門賞となりますし、国内初となる海外馬券発売という記念すべき年。また、海外遠征の際に聞こえる、日本人騎手で勝つ姿を見たいとの意見にも繋がるJRA免許を取得してのルメール騎手。

 もちろん強豪揃いとなるだけに、勝利を手にするのは簡単なことではないと思いますが、前哨戦であるニエル賞を終えて感じたことは、さすがフランス競馬を熟知したルメール騎手だからこそ、しっかりと本番を見据えて、次に繋がる競馬を組み立てている点でした。

 多頭数となる本番において日本馬がクリアしなければならない点の1つが、スローな流れの中の密集した馬群でもストレスを感じずに走れるかどうか?が大きなウエイトを占める気がします。5頭立てという頭数の少なさの中で、その点をどう結びつけるのだろうかと思い、見ていましたが、先頭でもなければ後方でもなく、5頭の真ん中の3番手を確保。

 左右の間隔は得られないにしろ、前後の間隔においては、できうる限りの最高のポジションであり、それを成し得てしまうルメール騎手と、期待に応えての走りを見せたマカヒキは素晴らしいの一言。これぞ意義のある前哨戦と思えるものでした。

 国内のレースにおいて、GⅠを勝利した馬が始動する際の前哨戦において、一昔前の関係者コメントには、「GⅠ馬ですから、結果を出して本番に」という言い方が多かったように思えますが、近年では、「あくまでも前哨戦ですから、本番に繋がる形で」との声も聞こえるようになりました。

 馬券を発売している点から考えると、前者の方が受け入れやすい内容ですが、馬を作るという論点で見ていると、後者には深い意味が存在しているのではないでしょうか。

 馬は機械ではなく生き物。1戦が与える体への影響、心への影響は想像する以上に大きなものがあると感じます。実績のある有力馬に騎乗する騎手心理も複雑なものがあるでしょう。その点をどこまで理解しえるか?これが重要なのではないでしょうか。

 もちろん、これは前哨戦に限らず、1戦1戦に言えることであり、それを強く感じたのは2連覇を成し遂げたトレヴの勝利における女性調教師・ヘッド師の言葉。

 大外から一気にスパートをした際における凱旋門賞初制覇の時は、「勝つには勝ったけど、決して褒められる騎乗ではなかった」と、ジャルネ騎手の騎乗に対しコメントをし、インから抜け出した連覇の際には、「鞍上が素晴しい騎乗だった」とジャルネ騎手を賞賛。

 同じ勝利でも、その内容に重きを置くのは、勝利という事実よりも、レースにおける疲労度など、その後の馬の状態を考えての証なのでしょう。

 もちろん、その答えを知るのは、トレヴ自身であり、別の捉え方があるのかもしれませんが、勝てれば良しとしないあたりに、次へと繋がる内容や新たな勝利が待っているのかもしれません。

 そして、それを堂々と言えること、言える環境下であることが、騎手だけでなくマスコミ、競馬ファンの考える物差しを広げる要因となり、競馬の発展へと繋がっている気がします。

 それだけに、現在マスコミとして競馬番組など参加させてもらっている私にとって、その点が現在における最も考えさせられる部分にもなっています。

 それでは皆さん、また来月お目にかかりましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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