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第88回 2017 日本ダービーを振り返って~騎手の心の在り方と判断力~

2017.07.14
 2017年も半分が過ぎ去り、既に夏競馬真っ盛り。
 この原稿が掲載される頃には、私も毎週末は福島へ、そして新潟へと足を運び、気づけば秋競馬となっていそうな気配。本当に不思議なことに、日本ダービーがついこの間のこととは思えないほど。

 毎週末の白熱したレースや予想に一喜一憂していることもあるのか、競馬に携わると、1つのことに対して余韻に浸る時間が極端に少ないこともあるのかな?と感じます。

 だからこそ、少し上半期を振り返り、GⅠ戦線で留めておきたいことを書こうと思います。

 東京競馬5週連続GⅠでのインパクトと言えば、3週連続でGⅠ制覇を成し遂げたルメール騎手でしょう。

 特に日本ダービーでは、道中のスローペースを判断しての追い上げに、場内がどよめき、レース後は賞賛の嵐。しかも返し馬ではハミを噛んでいる状況下。通常であれば、折り合いをつけることに専念したい気持ちが強くなりそうですし、未知の距離、動いて最後まで脚が持つかどうか?折り合えるか?守りに入ってもおかしくないように思えます。

 それを迷いなく追い上げ、その後もきちんとコンタクトをとり、勝利してしまうのですから、まさに神技。ルメール騎手自身も、レース前のプランにはなかったと話していただけに、瞬時に判断すると同時に体も動いていたのでしょう。

 これには、一緒に番組に出演していたダービージョッキーである岡部幸雄さん、安藤勝己さんも、「できない、動けない」と、ルメール騎手を称え、長年にわたりダービーを見てこられた井崎先生は、「これは、まさに騎手で決まったダービー」と総括されましたが、終わってみれば、1・2着は新馬戦からコンビを組んできた馬と騎手という結果に。またレース前のコメントを振り返ると、共に、「こういう展開になれば」とか「ある程度流れれば」「瞬発力勝負になれば」といった願望的要素はなく、「やる」といった覚悟のような強い意志があったのです。

 やはり誰もが手にしたいダービーというレースだけは、マグレでは勝てず、そこに至るまでの過程が何よりも大事であり、最終的な決定権が委ねられる騎手の心の在り方が問われるものなのかもしれないと、改めて感じるものでした。

 また先行し、4着と健闘したマイスタイルの横山典弘騎手ですが、あの日、同型の馬と騎手とのコンタクトを返し馬で見て、その様子に(行けないだろうな)と判断され、自身がハナを主張しようと決めた様子。ダービーという大舞台でも、冷静にまわりを見て判断できるのは、日頃から、そうした目で馬や人を観察している証に思えますし、現に、レース後の検量室で下馬した後、馬と共に引きあげる担当者の背中をポンと触り、「お疲れ、ありがとう」と言葉をかけ、皐月賞も日本ダービーもプラス体重で挑めている点を称えてもいたのです。

 そんな横山騎手の行動に、マイスタイルを担当する堂本助手は、「背中をポンと撫でてくれたノリさんの手と言葉に、自分たちの日々の仕事・馬作りを理解してのものだという思いが伝わり、温かさに包まれ、心底嬉しかったし、ジーンときました」と話されていましたが、関東と関西、所属先は違えども、横山騎手は、馬の状態のみならず、携わる人の仕事振りまでも馬を通して把握できているのでしょう。

 そういった意味でも、今年の日本ダービーは、学ぶべきことが多かったようにも思えます。皆さんの目には、どんな風に映りましたか?

 それでは、また来月お目にかかりましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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