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第98回 人は経験をしてこそ気づけるものがある

2018.05.18
 以前に、このコラムで書いたことがあるのですが、毎週末、関西から関東に通う新幹線の中での楽しみが、「気がつけば騎手の女房」でお馴染みの吉永みち子さんが、小冊子の中で掲載をされている、毎月1人の人物にスポットをあてて、その人の半生を紹介する文を読むこととなっています。
 月1回とあって年12人。多彩なジャンルに加え、年齢を重ねての人物が多く、その生き様や道のりを理解するにおいては、様々な視点や感性が要求される気がし、切り口や文の構成はもちろんのこと、その深さに、いつも書き手として凄いなぁ~と、吉永みち子さんを尊敬。

 現在、私は週3~4本コラムを連載していますが、もともとは文章を書くことも、本を読むことも得意な分野ではなく、どちらかというと苦手でした。

 小学生の頃は、何でも良いから本を購入してみては?と、祖父から毎月、図書券を与えられていたのですが、マンガすら興味がなく、付録目当てで購入していたところも。

 しかしながら騎手を引退後、コラムなどを書くことも多くなったことで、様々な方のエッセイや文に興味を抱くようになり、暇を見つけては、チョコチョコと読むように。

 すると、リズム感や、起承転結の持っていきかた、語尾の使いわけ、言葉の表現力などなど、書き手の皆さんの手腕や面白みを少しずつではありますが感じられるようになり、いつか自分も、そういったタッチで文章を書けるようになれたらな~と思っていました。

 特に人物スポットにおいては、吉永みち子さんのように。

 そんな折、毎月掲載させてもらっている1口馬主の方々に向けて発行されるクラブ雑誌で、昨年2年のブランクから騎手復帰をされた、地方所属の御神本訓史騎手との対談の依頼が舞い込みました。

 これまでも50名以上の方々との対談経験はありますが、その全てが編集の方にテープを起こしてもらい、その原稿チェックをするのが通例でした。

 しかし今回は、全てホソエさんにお任せしますという形での要求もあり、思い切って毎月拝読している吉永みち子さん風にしてみようと、挑戦。原稿用紙15枚程度に、御神本騎手の生い立ちから今に至るまでをまとめてみたのですが、その際に想像しなければならない時代背景や、それに伴っての環境が作り出す人々の心理状況、そして1人の人間が何を考え、どう向き合ってきたのか?それを私自身が感情移入しすぎないように冷静な目で捉えることができているのか?などなど、考えなければならないことの多さと、組み立てに、頭がパンク状態に...。

 正直、競馬の予想など、他の仕事に集中できない状況に陥ってしまい、改めて自分の不器用さに気づかされることともなりました。

 よって今回の初試みで、何を自分自身が感じたのかと言うと、人は経験をしてこそ気づけるものがあるということ。

 そしてそれは、それぞれの立場を理解することにも繋がっているということなのだと。

 今、トレセンの現場でよく耳にするのは、若手調教師によるマスコミや従業員とのトラブル問題。

 その中の1つでもあるマスコミとのトラブルにおいては、私自身も当事者となってしまった問題もあり、結果、組織の中の1人として周囲に迷惑をかけてしまったことを大いに反省をし、一時はマスコミの世界から退くことも考えました。

 しかし同時に、どの会社でもそうですが、新入社員として入社をし、平社員、係長、課長、部長といった役職への段階には、それぞれの場所での仕事や人間関係などがあり、それを経験することで、上に立った際に、それぞれの立場に立って物事が計れ、采配できる人物になっているのではと...。

 階段を飛び越えることを否定はしませんが、踏まなかった階段があるということは、そこが抜け落ちてしまう可能性を孕んでおり、秩序が保たれなくなる要因となるのかもしれないと、今回の様々な体験から感じました。

 皆さんは、どう思われますか?
 それでは皆さん、また来月お目にかかりましょう。
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