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第22回 ばんえい十勝

2010.10.25
 ばんえい競馬に用いられているペルシュロンやブルトンといった重種馬だが,走らせると意外に脚は速いらしい。まあ,見た目よりは,という注意書きこそ添えなくてはいけないのだろうが。
 一方,サラブレッドでも600㎏に迫るような馬なら,100㎏のそりなら,直線200㍍ぐらいは頑張って引っ張ってくれるという気もしないでもない。まあ,その場合にも「第1障害と第2障害は登らない」という条件を書き添えなくてはいけないのだろうが。

 8月23日,ばんえい競馬が開催されている帯広競馬場で行われた「JRAジョッキーDay」の取材に行ってきた。ばんえい競馬の須藤一夫理事と河内厩舎の安藤賢一助手の2人が発案し,藤田伸二騎手の協力を仰いで行われたこのイベントも今年で4回目。今年は武豊騎手が初参戦するということもあり,帯広競馬場には3590人ものファンが詰めかけた。

 当日はレース開始前から雨が降りしきるあいにくのコンディションとなったが,それでもJRAの騎手たちは,公開抽選会やトークショーと進んでファンの前に姿を見せただけでなく,馬券の売り上げにも大きく貢献したのではないかと思えるほどに,ばんえい競馬を楽しんでいた。

 この日,2レース組まれていたエキシビションレースも,馬券を売った方がいいのではないか?と思えたほどの盛り上がりを見せていた。残念ながらJRAで最多勝利をあげている武豊騎手は,ばんえい競馬における未公認の初勝利をあげることこそできなかったものの,「実際の馬に乗っているような感覚がした。でも,飛ぶようには行かなかったですね」と悔しそうな表情を浮かべ,来年以降の参戦にも含みを持たせるコメントも残した。

 ばんえい競馬でこうしたエキシビションレースを含めたイベントが行えるのは,JRAとばんえい競馬が同じ競馬というカテゴリーに属しながらも,そこで行われている競馬のルールは全く違うからである。

 これがJRAとNARだと話は違ってくる。まさか,JRAの騎手が来ているのにエキシビションレースを行うようなことはしないだろうし,トークショーをするなら,何レースか乗っていってもらった方が格好のファンサービスとなりそうだ。

 そもそも競馬のルールが違うばんえい競馬は,JRA,NARとも交流を図りやすい。これまでにも相互発売を行っている地方競馬場で様々なイベントを行ったり,実際にばん馬を競馬場まで連れて行って,その大きさや力の強さを披露している。実際にレースを行う必要がないので,主催者としても呼びやすいのだろう。

 ばんえい競馬を取り囲む環境は依然として厳しい。06年を最後に岩見沢市,旭川市,北見市が撤退を表明。07年からは帯広市の単独開催となったものの,黒字となった07年以降の売り上げは芳しくなく,毎年のように廃止論議が取りざたされている。だが,ばんえい競馬を取り囲むサポーターは,JRAやNARで開催されているどの競馬よりも温かく,そして心強い。このイベントに賛同したJRAのジョッキーたちだけでなく,知り合いのマスコミの中にも,ばんえい競馬の依頼とあらば,帯広まで進んで足を運ぶ者もいる。

 最近だと北海道で発刊されている旅行月刊誌で,毎月のようにばんえい競馬の特集が掲載されており,またNPO法人の『とかち馬文化を支える会』では,その名の通りに文化的な側面からばんえい競馬の存続を訴えている。数年前には「雪に願うこと」というタイトルの映画にもなった。
 
 ばんえい競馬は世界的に見ても例を見ない競馬であるだけに,JRAやNAR以外にも様々な分野と異文化交流が図れるのが強みである。でもそれは,これからJRAやNARが,外に向けて競馬をどのように紹介していくかというテストパターンとなっているような気がしてならない。

 JRAやNARも様々なイベントでサラブレッドの速さや美しさを見せる機会がまだあってもいいし,騎手のアスリートたる姿を証明するのもいいだろう。NHKでは「チャンス」という競馬をモチーフにしたドラマが放映されていたが,生産現場の姿を見せるにはいい機会だったと言える。

 今,ばんえい競馬の実情や取り組んでいることは,JRAやNARにとって決して対岸の火事ではない。競馬を広く認知させていくためにも,今のばんえい競馬から学ぶべき点は多いのではないだろうか。
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