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第42回 『日高自動車道』

2012.06.14
 少々前の話となるが、3月17日、日高自動車道(以下、日高道)が日高門別ICまで開通した。これで日高道は起点となる苫小牧東ICから45.7㎞延伸したこととなる。
 実は日高富川ICから日高門別ICまでが開通した17日は浦河からの取材の帰りで、ちょうど渡り初めなるものに参加できるチャンスがあった。勝手な渡り初めのイメージとして思い浮かんだのは、並んでいるときに紅白のまんじゅうが配られ、開通の時間に合わせて偉い人がテープカットを行い、高速道路のイメージガール的な人に見送られるというもの。しかし、ほんの5.8㎞延長されただけでそれもないだろうと思い、開通を待たずに日高門別ICの分岐点を通り過ぎた。

 その後、静内方面に取材に行った際、晴れて延長区間に乗ることができたのだが、やはり真新しい道路を車で走るのは楽しい。普段、取材で行かせてもらっている牧場の景色さえも、別の角度からだととても新鮮に見えた。

 生産者の方もさぞ喜んでいるのではと思ったのだが、意外なことに日高門別ICまで延長したメリットは、それほど感じられないという声が多かった。その最たる理由が、国道から日高門別ICまでの2㎞という距離。その間は外灯も少なく、接続する道路のカーブが多いこともあってか、夜だとそれ以上の距離にも思えるという。

 ならば、国道235号線を経由して、国道237号線から入る日高富川ICの方が、道路沿いも明るくて道幅も広く、多少の時間の違いこそあれど、スムーズに高速に乗れる気がするという。

 まあ、これには06年の3月からの約6年間、日高の玄関となっていた日高富川ICに対する慣れもあるのだろう。日高門別ICまで延伸してもなお、平取を経由して旭川方面に向かう国道237号線と接続する日高富川ICが、交通の要所であることは違いない。

 それにしても、馬産地で仕事をさせてもらってから約15年。まさか札幌から高速に乗ったまま、日高町門別まで行ける日が来たのは非常に感慨深い。初めて日高に取材で行かせてもらった時には、苫小牧東ICで高速を降りて国道を使っていたはずが、沼ノ端西IC、厚真IC、鵡川IC、日高富川ICと乗り降りの場所が変わっていき、ついには日高門別ICまで来ることができた。まさに日高道と共に歩んできたライター人生とも言えよう。

 ただ、こうした高速道路や高規格道路の延伸は、延伸区間で生まれる「素通りされる町」の過疎化というデメリットも生むのも事実である。実際、昨年の11月に道東自動車道の夕張-占冠(しむかっぷ)間が開通し、道央圏と帯広地区が高速道路で結ばれるようになったことで、ICの近くにある夕張や占冠などの道の駅の利用者数は減少している。何より道東道延伸の影響を受けたのは、日高町にある道の駅「樹海ロード日高」だろう。それまでは北海道を代表する交通の難所である、日勝峠越えのドライバーが立ち寄っていたものの、高速道路の無料化社会実験が行われていた時期とその前年を比較した場合、利用者の数が約半減したという数字もある。

 現在こそ、高速道路の無料化社会実験も凍結されたことで、「樹海ロード日高」の利用者も多少回復しているかもしれない。一方、開通当時からほとんどの区間が無料化されている日高道では、延伸区間が伸びるにつれて、それと平行して走る国道235号線の交通量が減っているのも事実である。

 だが、日高富川ICのように国道とのアクセスを良くすることで、「素通りされる町」は交通の要所ともなる。今後、日高道は浦河までの延伸が予定されているが、ICの設置場所によっては、その近辺に様々な波及効果をもたらす可能性もある。

 例えば、静内ICから北海道市場への道路を整備して、アクセスを更に良くすることができれば、道外からのバイヤーもこれまで以上に足を運びやすくなるのかもしれない。また車を素通りさせるのではなく、出口に強力なベクトルとなるものがあれば、無料化の力も相俟って、バイヤーを乗せた車は引きつけられるように、ICを降りてくれるはずだ。

 日高門別ICの向こうでは、今も日高道の延伸工事が行われている。今後、この延伸が日高に、そして馬産地にどのような効果をもたらすのかは分からない。それだけに浦河までの全線開通となるその日は、渡り初めをしながら日高とライター人生を見つめ直したい。
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