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第76回 『プロ野球ドラフトとPOG』

2015.04.19
 先月、Perfumeファンであることを、ここでカミングアウトさせていただいたが、このコラムのタイトルにもあるように、実は物心つくかつかないうちからの野球ファンでもある。
 しかも走力、パワーなど、選手の能力が数値化されていた野球ゲームを通して、より選手を深く理解していったこともあり、次第に成績のようなデータ面に目が行くようになっていく。

 いつしかTVで野球中継を見たり、もしくは実際に球場へ観戦に行った時でも、いつも手元にあるのは選手名鑑。しかも、選手の特長や昨年の成績などを、試合そっちのけで凝視するスタイルでの試合観戦となる。昨年、札幌ドームに行った際には、近くに飛んできたファールボールに即座に身体が反応できず、思わず持っていた選手名鑑をバリア代わりに広げてしまったほどだった。

 野球観戦ではファールボールにくれぐれも気をつけて!という気持ちを伝えたくて、このコラムを書いているわけではない。自分のような野球資料マニアとなっていくと、選手名鑑だけでなく、これから我が北海道日本ハムファイターズに入ってくれる選手をより深く知るべく、ドラフト会議の前に発売される資料本も購入するようになっていく。

 そこで気になってしまうのが、ドラフト1位候補ではない選手たち。この情報化社会において、「隠し球」と言われる選手は減ってきているが、それでも「こんな選手が我がファイターズに入団してくれないかな...」と、まるで球団編成のように、ドラフト当日まで落ち着かなくなってしまう。

 最近はこうした野球資料マニア、そしてドラフトマニアの要望を満たすべく、ドラフト会議の前には様々な資料本が発売されるようになった。僕も何冊か購入していることからしても、それなりに需要があるのだろう。

 ところでこの構図、どこかで見たことがあるなと思ったら、自分も原稿を書かせてもらっているデビュー前の2歳馬(ペーパーオーナーゲーム)記事と、かなり重なっていることに気付いた。

 確かにペーパーオーナーゲーム(以下、POG)では、指名馬を決める時にドラフト会議が開かれるし、しかもPOGに関する本も、ドラフトの資料本に負けない程、多数発刊される。いつか、ドラフト資料本で執筆したいと思っていた自分ではあるが、POG媒体で仕事をしている今の自分の状況は、ある意味でその夢が叶ったとも言えなくはない(笑)。

 まあ、冗談はさておき、POG媒体で執筆する際に、読者の方に届けなければいけない大事な情報とは、やはりその馬の能力。調教でのタイム、騎乗者の乗った印象、もしくは調教を見た印象からのスピード感。はたまた折り合いやデビュー時期など、実に多岐にわたる。

 一方、ドラフト資料本でも投手ならば球速や持ち球、打者ならば通算本塁打数や50㍍走力などはほぼ必須であり、その他に即戦力の選手なのか、もしくは高い将来性を持った選手なのかについても書かれている。

 POGは決められた期間内(多くは2歳戦のスタートから、次の年の日本ダービーまで)でのポイントで争われるので、即戦力の選手、いや競走馬が好まれるかと思いきや、意外と高い将来性を持つ未来のクラシック候補が好まれる傾向にある。実際のドラフト会議でも話題を集めるのは、高校野球を沸かせた選手が多く、このへんもまた、POGとドラフトは似通っている。

 そんな状況下でもドラフト資料本より、POG媒体の方が、まだ「隠し球」的な、他の媒体には取り上げられていない2歳馬がいたように思えた。例えば血統は目立たないものの、調教の動きが抜群であるとか、今は怪我などで一頓挫しているものの、回復後は良化が見込める馬がその例と言えるだろう。

 しかし最近は、育成牧場の方が実に協力的であり、媒体にかかわらず、様々な魅力に溢れる多くの2歳馬を取材させてもらえるようになった。その中には紙面の都合上、掲載できない馬もいたかとは思うが、それでも毎年のように、事前に馬の手入れをしていただき、写真撮影ではカメラマンの指示に応え、しかも撮影後には1頭1頭丁寧にコメントをいただけているのは、感謝の気持ちしかない。

 ただ、マスコミである以上、どこかで「隠し球」を探したい気持ちもあるのは事実。名スカウトは、お目当ての選手がいることを悟られないように、他の選手を見ているふりをしたり、時には「向こうでやっている試合で面白そうな選手がいたよ」といった話を、他チームのスカウトに流すこともあるという。

 これは使える作戦!と思ったが、最近は合同取材も多く、POG媒体では使えないことに気付いた。というわけで、これをお読みの育成牧場の皆さん、取材の際には「隠し球」といえる2歳馬を、後でこっそりと教えてください。お礼はPerfumeのCDで(笑)。
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