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第91回 『外厩 VS 馬産地ライター』

2016.07.22
 いきなりですが、仕事が減りました。インターネットの普及によって、何かと厳しくなった出版業界。後輩が出てこないのをいいことに、「永遠の若手ライター」を名乗っていた自分だが、それでもライターとしてのキャリアは間もなく20年となる。
 我ながらそのキャリアの長さには驚くばかりだが、ライター人生を振り返った時、名馬たちや、その名馬に携わってきたホースマンたちとの思い出とともに、「あの雑誌、休刊したなあ」とか、「毎年、話をもらっていたあの仕事、編集部から連絡が来なくなったなあ」との事実に気付かされることもある(涙)。

 まあ、仕事が減った理由はそれだけではない。近年、特に連絡が来なくなったなあと思えたのは、北海道の各牧場で秋競馬に備える「夏の休養馬」の取材。いつの間にか出版社からの連絡が、全くと言っていいほどに無くなってしまったのだ。

 ライターを始めて間もない頃は、なかなか本州の競馬場に行けなかった自分にとって、休養馬の取材は名馬を間近で見られるまたとない機会でもあった。その頃の休養馬取材で、今でも鮮明に覚えている光景がある。

 ノーザンファーム空港牧場へ休養馬の取材で訪れた際、「呉越同舟」とばかりに森林馬道から姿を見せたのが、その年の日本ダービー馬スペシャルウィークと、そのスペシャルウィークを次の年の有馬記念で、僅かハナ差だけ退けたグラスワンダー(USA)の2頭。休養ならではと言える、奇跡的なツーショットにメモを取る手も止まり、姿が見えなくなるまで2頭の背中を追い続けたのは言うまでも無い。

 その年にはファンタストクラブ木村牧場で、ジャパンC勝ち馬となったエルコンドルパサー(USA)の姿も目にしている。今から思えば、1995年に誕生した名馬3頭を北海道にいながらにして、じっくりと眺めることができたのは、休養馬取材のおかげと言えよう。

 この3頭の他にも、幾多のGⅠ馬を間近で見ることができた休養馬取材だが、近年、取材の依頼が無くなった大きな理由には、美浦や栗東のトレーニングセンター近辺に施設を構える「外厩」の存在が大きい。これまでなら春のGⅠシリーズを戦い終えた馬たちは、育成を行われていた北海道の牧場に戻っていたのだが、近年では秋シーズンまで「外厩」で管理される馬が増えてしまっているのだ。

 これは「外厩」が厩舎にとって、有効な施設であるのも大きいのだろう。普段から競馬と厩舎近くにある育成牧場との往復を図っていたような馬たちは、そのリズムを損ねること無く休養に入れるというメリットがある。しかも、調教師も頻繁に状態を確認できるのも外厩のメリット。輸送、そして状態の確認に際して、時間を要する北海道内の牧場における休養は、その点においては白旗を揚げざるを得ない。

 また、とある育成牧場の関係者は、JRA北海道シリーズが従来の4ヵ月から3ヵ月に短縮された影響もあると話す。

 北海道シリーズの開催期間が短くなったことで、育成牧場と競馬場を行き来するような管理方法、つまり北海道内における「外厩」が難しくなったという。それに起因するように、北海道シリーズの期間中に休養馬を預けてくれた厩舎も、入れ替えが難しくなったとの理由から休養馬を送ってくれない、もしくは休養に来たとしても、ほんの僅かの期間しか牧場で管理することが無くなったという。

 いくら、育成牧場で働くホースマンの技術が上がり、充実した施設の中で、より実戦に近い調教メニューを施せるようになったとはいえ、やはりその厩舎ごとにレース前の調整は行いたいのは事実。しかも、休養明けでのGⅠ挑戦も珍しく無くなった今、「休養」ではなく、「調整」を続けたいという厩舎側の意図もあるのだろう。

 これも時代の流れかと、休養馬取材を行ってきた人間としては寂しくなるが、それでも6月上旬の時点において、今年の皐月賞馬ディーマジェスティがファンタストクラブ木村牧場で、そして、昨年の有馬記念を制したゴールドアクターがファンタストクラブで調整中、あるいは調整されることが発表された。今年の春GⅠ戦線を沸かせた馬も、決して数は多くなくとも、今後、北海道内の育成牧場で管理されているとのニュースは聞こえてきそうだ。

 人にとっても心地好い北海道の夏。馬にとっても、本州の暑さに苛まされることなく、よりリフレッシュした状態で秋競馬に望めることは、これまでの活躍馬たちの成績でも証明されている。時代には逆行しているのかもしれないが、今一度、北海道での休養が見直されていいのではとも感じてしまう。

 あ、決して休養馬取材がしたいからではありません!というよりも不肖村本、実は美浦や栗東近くの「外厩」の牧場スタッフの皆さんとも、意外と仲が良いものでして...。
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