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第39回 『タイトルか内容か』

2012.03.14
 本稿1月号で『NAR グランプリ2011』の予想を述べた。結果はご存知の通り見事なハズレとなった。
 予想原稿を入稿した後に行われた準備委員会において、山野浩一委員より「牡馬と牝馬を分けて表彰したい」という旨の意見が出され、事務局に対し検討されるよう求めたのだ。実は、ここ数年毎年のように出されていた案件だったのだが、今年遂に委員による採決にまで持ち込めた。2010年の「GRANDAME-JAPAN」創設、そして2011年の「JBCレディスクラシック」創設に代表される「牝馬競走の振興」に取り組んできたことが、牡牝別の表彰を後押しした。

 年明けの本委員会で、委員による採決が行われ、満場一致で採択。馬齢別の部門は「2歳最優秀牡馬」「2歳最優秀牝馬」、「3歳最優秀牡馬」「3歳最優秀牝馬」、そして「4歳以上最優秀牡馬」「4歳以上最優秀牝馬」の表彰が行われることとなった。同時に「最優秀牝馬」部門は廃止となった。

 選定委員会はダートグレード競走を軸に進めるため、難航するケースも多々ある。今回、印象に残った部門をいくつか振り返ってみたい。

 「それでは始めましょう。まずは2歳最優秀牡馬から」。
 いきなり難航した。1月号で「予想」としたのは、こういった事態を想定してのものだが、書き逃げすることも出来ないので、振り返る。

 まず原則として馬齢別の部門と年度代表馬に「該当なし」は許されない。必ず優秀馬を選定しなければならないのだ。まるで該当する馬がいないということはまずないのだが、ダートグレード競走の勝ち馬がいない状態で、地区重賞の勝ち馬の中から甲乙付け難いケースが最も難しい。それが、最初にやってきてしまったのだ。

 兵庫ジュニアGP3着のエーシンユリシーズ、イノセントカップに勝ったゴールドメダル、そして南部駒賞に勝ったアスペクトが候補となり、採決の結果ゴールドメダルが選出された。直接対決となった全日本2歳優駿での最先着が決め手となった。こういった場合、翌年の活躍がひじょうに気になるケースなのだが、年明けの浦和・ニューイヤーカップを期待に応え勝ってくれた。選定委員としてはホッとした。

 2歳最優秀牝馬は、今回の結果が今後どういう影響を及ぼすのか気になる。例年ならばダートグレード競走の1着、または2着が'ほぼ自動的に'選ばれる。牡馬、牝馬別に分かれていなければ、もしかすれば、エーデルワイス賞2着、北海道2歳優駿3着のシーキングブレーヴが選ばれていたかもしれない。少なくとも予想はそうだった。

 しかし、強豪馬が集まった地方競馬全国交流の東京2歳優駿牝馬に勝ったエンジェルツイート、同じくローレル賞に勝ったドラゴンシップも候補に挙げられた。特に東京2歳優駿牝馬の評価は高く、ホッカイドウ競馬在籍時の対戦成績なども参考にされ、採決によりエンジェルツイートが選出された。格に関わらず、レースのレベル自体が評価に挙がり、結果ひっくり返った。

 準備委員会の帰りに、他の委員とダートグレード連対馬がほぼ自動的に選出される現状を語り合った時、「それだったら委員はいらないよね」という意見を聞いたことを思い出した。

 3歳牡馬、牝馬、4歳以上牡馬、牝馬は実績もあり、ほぼ納得の結果だった。そして、今回の見せ場、最優秀短距離馬の選定となった。

 この部門はさきたま杯に勝ったナイキマドリードと、東京盃2着、かきつばた記念、クラスターカップ3着のラブミーチャンの2頭が候補だった。
 ここでも「タイトルか内容か」の議論となる。タイトル重視ならナイキマドリードだが、さきたま杯一発で、他に芳しい結果を残していなかった。ラブミーチャンはタイトルこそないが、あわやの東京盃と、JBCスプリントのレース内容は最優秀短距離馬に相応しいレベルであった。筆者は内容重視でラブミーチャンを推した。議論では甲乙付け難く、そして採決でも6対6の同点。その場合、座長が最後の1票を投じる。信國座長は「ダートグレード競走を勝っているという価値を尊重したい」と述べ、ナイキマドリードが選出された。

 もちろん結果に異論はない。むしろ、毎年このように甲乙付け難い、白熱したレースが増えてくれれば、選定委員としてはむしろ選び甲斐がある。
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