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第103回 『東京ダービー雑感』

2017.07.14
 「嬉しい一言で。なんかホッとして、ドッと疲れが出ました。僕のジョッキー人生で最良の日です。」と森泰斗騎手。
 6月7日、大井競馬場で第63回東京ダービーが行われ、羽田盃2着のヒガシウィルウィン(船橋)が、単勝1.8倍の断然人気キャプテンキングを破り、ダービー馬の栄冠を手にした。

 レースはサイバーエレキングが逃げ、カンムル、シェアハッピーと続く。その直後5番手には、3週間前に地方競馬通算7,000勝を達成した的場文男騎手が手綱を取るブラウンレガートが。そしてその外にヒガシウィルウィンと、それを見るように羽田盃馬のキャプテンキングという隊列。

 前半1000mが63秒4の平均ペース。3コーナーで逃げたサイバーエレキングが後退し、カンムルとシェアハッピーが前に出ると同時に、抜群の手応えでヒガシウィルウィンが進出する。連れてキャプテンキングも動き出すが、先に仕掛けた羽田盃とは逆に、今度は追いかける格好になってしまった。

 直線に向いてもヒガシウィルウィンには勢いがあり、2馬身、3馬身と引き離し、結果2着に6馬身の差を付ける圧勝だった。
2着争いは直線で最内を突いてブラウンレガートが一旦2番手に上がるも、外からキャプテンキングが伸び、交わしたところがゴールだった。

 勝ちタイム2分6秒9は、重馬場としてはやや物足りないが、完全に抜け出した点を考慮すれば、まずまずだろう。

 羽田盃はキャプテンキングを追いかける格好となり、その粘りに屈したが、ダービーでは確実に伸びる末脚を生かすため、キャプテンキングよりも前で競馬する作戦が見事にはまった。

 一方2着のキャプテンキングは勝負処の反応が羽田盃の時よりも鈍く、置かれてしまった。

 悲願のダービー制覇を目指しブラウンレガートとともに36度目の東京ダービーに臨んだ的場文男騎手は、前述の通り一旦2番手も、残り50mで交わされ3着という結果に。「最高の競馬が出来た。あの位置を取れて負けたんだから仕方ない。ダービーはまた来年だよ」と。

 ヒガシウィルウィンはサウスヴィグラス(USA)産駒。本馬の現役時代もそうだが、その産駒も多くは基本的にスプリント~マイルでの活躍馬が多く、「ダービー」というイメージは正直湧かないのだが、調べてみると、フォーインワンが2010年に、またカイロスが2013年に福山ダービー(ダート1800m)を。2015年にキングプライドが九州ダービー栄城賞(ダート2000m)を。そして今年はヒガシウィルウィンが東京ダービー(ダート2000m)、ベンテンコゾウが北海優駿(ダート2000m)と2つの「ダービー」に勝っている。また、「ダービー」ではないがダートグレード競走では牝馬のタイニーダンサーが2016年の関東オークス(JpnⅡ・2100m)に勝っている。参考までに産駒の最長距離勝利はナムラタイタンが勝った2014年の北上川大賞典のダート2600mである。

 いずれも地方競馬所属馬によるレースだったり、実質JRA馬同士での戦いとなる3歳牝馬のダートグレード競走だったりと、ある意味'イクスキューズ'の付くレースではあるのだが、競って勝負強く、自分の型にはまれば圧勝もある。

 ヒガシウィルウィンは体型的にも母の父ブライアンズタイム(USA)の影響を受けていると思われ、ある程度距離はこなせる感じはした。統計的には産駒の多くは1600~1800m付近に「壁」があり、羽田盃でキャプテンキングを交わせなかったところに「壁」を見た人もいたかもしれない。

 そして、毎年恒例「大井の七不思議」のひとつ。今年はブラウンレガートに騎乗し、一旦10度目の2着か!と思われたが、最後キャプテンキングに交わされ3着だった的場文男騎手。

 地方競馬通算7,000勝を達成し、前の開催から大井競馬場の場内はいたるところ「赤白星散らし」の装飾が施され、グッズ売り場では勝負服のレプリカTシャツや、的場騎手の顔が大きく描かれたタオル(デザイン的にちょっと拭きづらい)が売られ、場内のうどんにまで星形のトッピングが載せられているという祝福振り。

 さすがにやりすぎという感じもするが、佐々木竹見騎手の地方競馬通算7,151勝の記録更新は時間の問題だけに、おそらくそこまでは引っ張るのだろう。例年通りブラウンレガートの単勝を握りしめ観戦した。そして記念馬券が1枚増えた。
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