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馬ミシュラン

小山内完友 馬ミシュラン

第111回 『紙への愛着』

 2月19日、都内ホテルに於いて全国公営競馬専門紙協会の年次総会が行われた。

 当然であるが筆者も協会加盟社の社員であり、協会事務局の事業・編集局の局長、ということになっていて、ようは事務方なのだが、専門紙協会として行う事業等の実行部隊でもある。さらにNARグランプリ優秀馬選定委員会の委員も、協会推薦で委嘱されている。

 事務局としての仕事のひとつに協会会報「APS通信」の編集業務があり、毎年NARグランプリに合わせて発行している。今年は日程の関係で表彰式と年次総会の順序が逆になり、最初に総会で配布となった。

 会報の4面に全国公営競馬専門紙協会加盟社の一覧が掲載されているのだが、その原稿を作成していて「随分少なくなったな」と感じた。

 今年度の総会時点での加盟社は20社。中津競馬が廃止された平成13年度の総会時点の加盟社は41社だったから、この17年間で我々の仲間21社がこの業界を去ったことになる。(未加盟の会社が3社、1社で複数発行していた社もあったので、合計で25紙が廃刊となっている)

 その多くは競馬場の廃止に伴うものだが、業績不振や、悪化する前に手を引いてこの業界を去ったところもあった。

 しかし、生き残ったとしても天国とは言い難い。ここ数年、紙の部数減が止まらない。

 それは専門紙に限らず、スポーツ紙も同様。ある日刊紙の記者は会う度に「ウチはもうダメだ」と言う。部数減もさることながら、今や日刊紙は掲載料の出る馬柱掲載が中心となり、せっかくいい取材をしても柱の掲載が最優先で、記事の掲載スペースが取れない、写真の出稿も減っている。取材はネットに回って、紙は馬柱で埋まっていては、現場のボヤきが止まらないのも当然だろう。我々も毎日会社で購読しているスポーツ紙には目を通すが、馬柱ばかりで読むところが減った。

 紙媒体は本格的な末期を迎えている。

 一方、コンビニプリントは徐々に部数を増やしている。かつてのダイヤルQ2を利用したFAXサービス等のいわば延長線上にあるサービスで、コピー機の進化と、光ファイバー網の整備によって可能となったサービスである。また今年は大雪の影響でレースに配送が間に合わない日が多かったが、データならそんなこともない。

 PDF版等、ダウンロード販売する方法は以前からあり、最近はスポーツ紙も地方版に参入してきている。レース単位やまとめでの販売も可能で売る側からすれば使い勝手がいいのだが、ネット物販は進化のスピードが恐ろしく速く、すでにダウンロード販売は時代遅れになりつつある。

 例えばアップルは、ダウンロード販売のiTunes Storeから、定額制のApple Musicに軸足を移しつつある。実際使っているがこれは便利で、一部参加していないアーティストはあるものの、最新から古いものまで定額で聴き放題である。同様のサービスにLINE MUSICやAWAなど既に8社ほどあり、これらのサービスが普及することによって、CD販売、ダウンロード販売、CDレンタルはいずれ消えることになるかもしれない。

 専門紙のネット版もいずれ定額ダウンロードの波が来るかもしれない。来るとしたら、タブレット端末や電子ペーパーのようなデバイス普及のためのコンテンツとして有望だ。その日行われるレースの新聞が定額でダウンロードし放題!というのは、将来的にはないとは言えない。参加音楽レーベルが増えれば、聴けるアーティストが増えるように、協会加盟社でまとまれば、全国の競馬場の新聞が読めるようになるかもしれない。

 競馬新聞の編集作業は変わらない。早朝からトラックマンが時計を採り、厩舎を回り、データを入力して、編集部が膨大な文字を校正し、そして各々予想し、紙面を組み上げる。恐らくネット新聞になってもその手順は変わらないだろう。

 我々競馬専門紙は圧倒的な量の一次情報を握っているが、売上として昇華しないのは、結局はアウトプットが下手だからなのかもしれない。特に在宅投票利用者や、可処分所得の少ない若年層をどうやって捉まえるかは、ここ数年来課題のままである。

 実際のところ、ネットで記事を読み、主催者や地全協のサイトで馬柱をプリントして馬券を購入している層が増えている。

 そこに飛び込むこと自体は技術的にも容易だが、紙への愛着を捨てられないものもまた事実である。そこが我々のネックでもある。