JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第116回 『マトメーター』

2018.08.24
 「マトメーター」というのを聞いたことがあるだろうか。正式名称「MATO-METER」という、的場文男騎手の地方競馬通算7,000勝までのカウントダウンを大井競馬場の正門前に掲示していたものである。
 元々は2004年に当時シアトルマリナーズに所属していたイチロー選手が、ジョージ・シスラー選手の持つメジャー年間最多安打記録の257本(1920年達成)の記録を84年ぶりに更新しそうになったとき。熱烈なファンであるエイミー・フランツさんがイチロー選手の安打数をカウントしていた手作りのボード「イチ・メーター」の、言ってしまえば「パクリ」である。

 その「マトメーター」は2017年5月17日、川崎競馬場の川崎マイラーズをリアライズリンクスで制し、地方競馬通算7,000勝を達成。初代は一旦お役御免となったが、佐々木竹見元騎手が持つ地方競馬通算7,151勝の記録更新が迫り、再び「MATO-METER2」として、現在、大井競馬場の正門内に掲示されている。

 地方競馬通算7,000勝達成から約10か月後の今年3月15日に地方競馬通算7,100勝を達成。3月27日には桑島孝春元騎手が持つ、地方競馬通算騎乗回数40,201回の記録を更新。月20勝ペースなら7月ぐらいには7,152勝の記録達成間違いなしと思われたが、好事魔多しというか、6月15日の川崎競馬第2競走で落馬し、左膝下を20針縫う負傷をし、しばらく療養のため休むことを余儀なくされた。

 しかし、23日後の7月8日から始まった大井開催で復帰。膝下がパックリ割れたら普通の62歳ならもっと長引くはずだが、恐るべし回復力というべきか。

 そして復帰3日目5Rに勝ち7,144勝目を挙げ、あと8勝とすると、さらに当日のJpnⅠジャパンダートダービーでは8番人気のクリスタルシルバーに騎乗し2着オメガパフュームからクビ+クビ差の同タイム4着に導くなど、本当に負傷で休んでいたのかと周囲を驚かせる、相変わらずの名人技を披露した。

 翌週の7月17日の浦和競馬でさらに1勝を加え、本稿執筆時点で地方競馬通算7,145勝。記録更新となる7,152勝まであと7勝に迫っている。

 相変わらず絶好調な的場騎手を盛り上げるため、大井競馬の公式ホームページでは特設ページを立ち上げ、記録更新までその足跡を納めている。

 大変なのは記録をするカメラマンで、記録更新まであと10勝となった6月6日から、「#あと○勝」と写真と動画が掲載されている。担当の某オフィシャルカメラマン氏は覚えている限りは5月末ぐらいから即応体制を整え、騎乗する日は全て臨場している。当然勝てず無駄足(ごめんなさい)になる日も多いが、そういう企画だから仕方ないだろう。

 こういった記録取材は結構つらい。的場文男騎手の場合はカウントダウンがあるから、取材もカメラマンも、記録更新だけを取材するならリーチがかかってから動けばいいからまだいい。

 佐々木竹見騎手の時は勝てば記録更新という状況で、こちらも同じように毎日騎乗するレースに臨場する必要があった。ただ、あの時も引退を表明していて、2001年7月8日が本当の「ラストラン」と決まっていた。結果的にラストラン前日の7月7日川崎競馬8Rのサファリワンダブルでの勝利が7,151勝目で、ラストランシリーズ開催だったこともあり、筆者も幸運にもそのレースを観ることが出来た。

 そういえば、本稿執筆のために下調べをしている時に思い出したのが、佐々木竹見騎手も的場文男騎手と同じように、記録更新の直前にケガでしばらく休んでいたことだ。

 引退を表明してから「ラストランシリーズ」と称して高知、笠松、名古屋、佐賀、宇都宮とファンにお別れするために全国行脚を行っていたのだが、4月の船橋で騎乗馬に蹴られ、右大腿四頭筋挫滅の負傷をし、約1か月半の休養を余儀なくされ、予定されていた水沢、上山、浦和、園田、大井、高崎を休んでいた(上山、園田、高崎、大井と三条は復帰後騎乗)。

 的場文男騎手は復帰後大井、浦和開催で2勝を挙げている。この後のペース次第ではあるが、地元で記録達成を狙うのであれば7月30日からの開催か、その次となるとお盆開催になるだろう。

 いずれにせよ東京ダービーを勝つまでは辞めないと思うので、さらなる記録更新は確実。同時に終わりのない取材の始まりでもあるが(笑)
トップへ