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第1回 注目の種牡馬ルースリンドと産駒たち

2014.12.25
 皆様、お久しぶりです。「はじめまして」の方もいらっしゃるかも知れませんね。南関東競馬で取材をしているライターの阿部典子です。馬に魅せられてこの世界へ入り、何を見ても馬のことを考えてしまう大の馬好き。以前はこちらで川島正行厩舎のコラムをお伝えしていましたが、今回からは南関東競馬観戦でちょっとしたスパイスになるような'サイドストーリー'をお伝えしていきたいと思います。
 第1回は、数少ない初年度産駒から重賞ウイナーを誕生させている注目の種牡馬・ルースリンドとその産駒について綴っていきましょう。
 ルースリンド(父エルコンドルパサー 現役時 船橋・矢野義幸厩舎)といえば、JRA未勝利から南関東に移籍し、重賞ウイナーになった名馬。交流重賞でも南関東の雄として、多くのファンを沸かせる走りを見せてくれました。
 常に脚元の不安と闘う彼を支え続けたのは、担当の上永吉達朗厩務員を中心とした'チーム・ルースリンド'。普段の厩舎作業時にも、ルースリンドを勝たせたい、勝ちたいという強い気迫が醸し出す、独特の近寄り難い雰囲気を放っていたのを今でもよく覚えています。

 そんなルースリンドの重賞初制覇は2007年の川崎・スパーキングサマーカップ(SIII)。管理する矢野調教師にとっても重賞初制覇となったこのレースでは、師の朋友であり早くからこの馬の能力の高さを見抜いていた故佐藤隆騎手の遺影を携えての口取り撮影となりました。
 南関東で重賞4勝を挙げたルースリンドは、2010年10月、3連覇をかけた東京記念(SII)で2着。調教パートナーとして長年共に歩んできた佐藤裕太騎手(現調教師)を背にしたこのレースをラストランに、種牡馬の道へと進みました。
 北海道への出発前に厩舎で行われた壮行会では、厩舎スタッフがルースリンドの頬や首を抱き、別れを惜しむシーンも。馬運車には矢野調教師が用意したルースリンドの大好物、箱いっぱいのバナナも一緒に積み込まれました。

 そのルースリンドの初年度産駒は2012年生まれの8頭。2014年12月23日現在6頭がデビューし、4頭が勝ちあがる優秀な成績を収めています。中でも、平和賞(SIII)とハイセイコー記念(SII)で重賞2連勝、一躍2015年の南関東クラシックの注目馬となったストゥディウム(矢野義幸厩舎 牡馬 生産:様似 清水誠一氏)は、ルースリンドの名に再度光を当てた孝行息子と言えるでしょう。
 「ルースリンドそっくりの切れる脚!」と矢野調教師も嬉しそうに語るその末脚は、レースを重ねるたびに冴え渡っているとのこと。現在は放牧中で、復帰は3月の京浜盃(SII)の予定となっています。

 第1回 注目の種牡馬ルースリンドと産駒たちの画像 母ルナマリアも厩舎ゆかりの血統という点も魅力的なストゥディウム。同じく矢野厩舎に所属する半兄のビルス(父シルクフェイマス)とは隣同士の馬房で暮らし、兄弟顔を出して並ぶ微笑ましい光景もしばしば見られました。ビルスは鼻息もふんふんと「僕ここにいます!来てくれるのを待ってますから!」と、ちょっと離れた場所からもアピール。一方ストゥディウムは「僕、ここですよー。ねえねえ。」と鼻を寄せてかわいくアピール。
 両馬ともレースや調教時には、母譲りの気の強さを垣間見せているそうですが、オフタイムの兄弟の様子を見ていると、馬と人、共通の言葉はもたなくても、彼らの心のウチが伝わってくるようで微笑ましい気もします。
 ちなみに、いろいろな関係者の証言からも、馬も生き物なので同性と異性に対する態度には違いがあるようですよ(笑)。

 注目したいルースリンド産駒としてもう1頭、父と顔もそっくりなロイド(矢野義幸厩舎 牡馬 母トゥルーオトメ 生産:静内山田牧場)が12月の船橋でJRA認定競走を勝利し、1月5日に行われる中山・寒竹賞(芝2000)への出走を予定しています。怖がりの面があるということですが、距離延長も好材料。こちらも父譲りの末脚が楽しみな存在です。

 周囲の熱い思いを受けて南関東競馬から種牡馬入りしたルースリンドと、その産駒が見せてくれる'ロマン'からも目が離せない2015年になりそうです。


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