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第15回 競馬場の見張り番 限定エリア「検体採取所」

2016.02.25
 今回はヒミツの場所「検体採取所」についてお話していきましょう。
 厩舎が隣接し、造りがコンパクトな地方競馬では、レース以外でもいろいろなシーンを目にすることができます。装鞍所に向かう馬、レースを終えて帰る馬、あるいは馬運車に乗り込む遠征馬の姿などなど。大井、川崎、船橋では、スタンドの端から、馬場入場やレースから戻ってくる姿を見られますし、船橋ではレースの合間に内馬場を通って行き帰りする馬たちの様子を眺めることも可能。浦和では一般道を通るシーンも。そんなレース以外のちょっとした風景もまた、競馬を楽しくしてくれる'競馬観戦のスパイス'になるように思います。

 一方、ファンの皆さんから見えない厩舎エリアでは、開催中も装蹄師さんがお仕事していたり、業者さんが「よっこらしょっ」と飼料を担いで馬糧庫に入って行ったり、出走馬の厩務員さんが中継を見ながら出発のタイミング(レースの発走、ゴールの時間)をチェックしていたり。そんな様子を目にすると、表に出ることはなくても、止まることのない'馬を巡る時間'が流れ続けているんだなぁと思うこともしばしばです。

 そんな中、ファンの皆さんも、私たちマスコミも見ることができないのが、競走馬の尿を採取して、禁止薬物が摂取されていないかどうかをチェックするためのヒミツの場所「検体採取所」です。

 第15回 競馬場の見張り番 限定エリア「検体採取所」の画像
 ここは'公正'を管理するための重要な場所。以前、競馬女子部にちょこっとだけ掲載したことがありましたが、今回、もう少し詳しくこちらでも紹介しておきましょう。

 この「検体採取所」ですが、南関東4場でファンの皆さんから見える場は残念ながらありません。スタンドから比較的近いのは川崎と船橋ですが、どちらも業務エリアの奥の方。厳密に管理されている場所に位置しています。

 今回掲載している写真は、特別な許可のもとで撮った船橋競馬場での様子です。採取した尿や血液への異物の混入を防ぎ、正しく検査を行うために、飲食や喫煙する場所も厳しく管理されています。

 この検体採取所には各レースの1,2着馬と、人気があるにも関わらず大敗してしまった馬など、公正な状態で出走したか否かをチェックするために合計3頭がやって来ます。採取所には最大1時間滞在して、尿による検査を実施。どうしても尿が出ない場合には血液を採取するとのこと。時々、血液採取されてちょっぴりムムム顔のお馬さんと、「やっと・・・」という雰囲気が滲む厩務員さんが出て来ることがあります。その様子は、小児科で注射を打たれた子供と、ほっとした家族の雰囲気に少し似ているような・・・。

 検体採取所の中には、周回できるミニ運動場もあり、馬たちはそこでクーリングダウン。船橋の場合、以前は砂地でしたが、昨年春の改装できれいになったそうですよ。

 検体採取所の馬房は特別なものではなく、一般的な作りとのこと。ここでは、扉を閉めて落ち着いた雰囲気にして採取するそうです。やっぱり知らない人や他の馬がいる場所で、ということになると、馬も緊張してしまうのでしょう・・・。

 洗い場で汗や汚れを落としている時、検査に必要なおしっこをしてしまいそうな気配は、担当厩務員さんならすぐに分かるそう。気配がしたら素早く容器を差し出して手際よく採取するそうです。洗い場では通常のレース後と同じく、目に入った砂を取り除くための'目洗い'なども行われますが、気合いが残っていてすんなり洗えないお馬さん、すぐに洗えるお馬さんなどなど、やっぱりここでも個性が見られるそう。厩務員さんが馬の目に口元を近づけ、フッと勢いよく息を吹きかけて砂を取り除く姿は、何度見ても「親子みたいだなぁ」なんて思います。

 ファンの皆さんが楽しめるスタンドや施設が続々とリニューアルされている南関東競馬場。今回はその裏側にある限定エリアを紹介してみました。クラシックの足音も間近になり、競馬場もだんだん華やいでくる季節。今年も春も、新しい競馬の楽しみ方を見つけられそうで楽しみです。
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