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南関フリーウェイ

阿部典子 南関フリーウェイ

第49回 「報われた思い」佐藤裕太調教師 ロジータ記念(SI)優勝

 11月28日、川崎競馬場で行われたロジータ記念(SI)を制し、3歳砂の女王の座に輝いたのは佐藤裕太厩舎のクロスウィンド(父ヴァーミリアン)でした。門別でデビューし、この勝利で重賞3勝目。

 もともと輸送が苦手というクロスウィンドですが、この日はマイナス13キロでの出走。しかし、最後は2着馬に2馬身差をつけてゴール板を先頭で駆け抜け、佐藤調教師に嬉しいロジータ記念(SI)初優勝のタイトルをもたらしました。

nf201812pic_アップ用.jpg 佐藤調教師といえば、騎手時代には故川島正行調教師のもとで数々の重賞馬たちを調教パートナーとして支えたことでも知られています。ロジータ記念(SI)についていえば、近年だけでも、2011年クラーベセクレタ、2012年エミーズパラダイス、2013年カイカヨソウと、川島正行厩舎3連覇達成の陰の立役者としても大きな存在でした。

 だからこそ、今回の優勝は格別といえるでしょう。これまでずっと『縁の下の力持ち』として見ていた煌く風景の中、手掛けた愛馬と同じ祝福の舞台に立つ・・・。その感慨は、佐藤調教師の「今までの(ロジータ記念(SI))優勝と全然違います。泣きそうでした」という言葉と、とびきりの笑顔が全てを語っていたように思います。

 「自分が調教した馬で勝てた時も嬉しかったけど、やっぱりレースに乗れない悔しい気持ちがどこかにありました。今回は喜びの中に、調教師としての責任感もあって格別です」と佐藤調教師。「自分は調教師だから(調教で)乗らない方がいいかも知れないけど、同じメンバーで馬に携わることで、厩務員さんたちも安心してくれるのではと思います。馬の背中の感触が自分で分かるので、オーナー様に馬の状態を説明しやすくなりますし、ローテーションの判断もしやすくなっているのが利点かなと思います。ただ、自分が乗ると、馬を大事にし過ぎてしまいそうで(笑)」。

 そんな佐藤調教師の言葉を、記者に転身した元騎手の金子正彦さんが大きく頷きながら聞いていた姿も貴重なシーンでした。「そうだよね。加減が難しいよね。強くやりすぎてもいけないし、大事にしすぎてもいけない」と金子元騎手。「そうなんですよね」「そうそう、うんうん」と、元騎手同士というだけあって、お二人の会話は馬の背中を知っている者同士の特別な領域へと。そこには"共感"が生むあたたかさがあり、ロジータ記念優勝に新たな華を添えていました。

 「川島正行厩舎でたくさんの重賞馬に乗った経験が活きていると思います。あの時の悔しい気持ちが報われた気がします」とも語った佐藤調教師。"報われた"、というこの言葉は、当時の佐藤裕太"騎手"のことを知っている方々が聞いたら感涙ものなのではないでしょうか。私自身、この言葉を聞いた時には心が震える思いでした。

 「クロスウィンドは揉まれて強くなるタイプ。もともとポテンシャルが高い馬ですから、磨き甲斐がありますね。今回は思ったよりも馬体重が減ってしまいましたが、それがなければもっといいパフォーマンスもできたのではと思います。調教での注文もありませんし、おとなしくて管理しやすい優等生です」とのこと。苦手な輸送を克服するため、普段とは違う時間に馬房から出すなど、精神的な訓練も行ってきたそうです。

 担当は佐藤調教師と旧知の伊藤厩務員。「今回は体重が減ってしまいましたが、伊藤くんはエサを食べさせて、馬をふっくらさせるのが上手なんですよ。普段からとてもよく馬を世話してくれています。そういう愛情が伝わって今回の結果になっているのかなとも思います」(佐藤調教師)。

 ジョッキー時代は午前2時から午前10時頃まで1日20頭ほどの調教を行っていたという佐藤調教師。現在も12頭(ロジータ記念優勝時)を手掛けているとのこと。川島正行厩舎から馬創りを共にしている厩舎スタッフに、開業後から仲間入りしたメンバーも加わって今年はここまで41勝(12月24日現在)。昨年の35勝を上回る成績をあげ、「チーム・佐藤裕太厩舎」の力強い推進力を感じさせます。

 地方競馬を支えてきた苦労人・ジョッキー時代から、地方競馬を牽引する存在へ。来年の佐藤裕太厩舎からも目が離せません。