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第54回 牧場の仕事の魅力にふれた早春の馬産地

2019.05.27
  先日、早春の馬産地へと行って来ました。生まれて間もないとねっこの姿や若葉が萌え始めた山々の風景に癒されつつ、牧場で働く友人知人恩人の皆さんの姿を見て、初心を思い出す時間にもなりました。
 育成場に勤務する友人は、馬の仕事に就いて25年以上の大ベテラン。以前は馴致・調教に携わり、GIホースを手掛けたこともありました。現在は場長として、若駒から繁殖牝馬まで幅広い層の競走馬・元競走馬と向き合う日々を送っています。

 「人手が少ないのをカバーして、効率よく仕事ができるように施設面での改革や工夫もしている」と案内してくれたのは、馬房と放牧地が直結している珍しい構造の厩舎。普通は、馬房から馬を出し、厩舎内から敷地(または道路)を通って放牧地へと馬を連れて行くのですが、ここでは馬房の扉を開けると馬が自分で放牧地へと行ける造りになっています。百聞は一見にしかず。写真を掲載しておきましょう。リビングから目の前の庭へ出るイメージ、放牧地の一角に厩舎が建っているという感じでしょうか。


 第54回 牧場の仕事の魅力にふれた早春の馬産地の画像
 ただし、集牧は今までと同じくらいの労力がかかるそう。昼夜放牧で疲れた馬たちが「早く帰って馬房でゆっくりしたい」と厩舎近くに集まっていれば良さそうですが、丘になっていて起伏にとんだ放牧地だと、集馬時間になっても姿が見えないほど遠くにいることもあるそうです。「1頭連れて来るとみんなついて来るとかないのかな?」と聞くと、「(笑)来ない・・・」とちょっと遠い目に(笑)。馬を馬房に戻すため、広い放牧地を何往復もすることもあるそうです。

 放牧する場所にも気を遣うとのこと。放牧地同士が隣接する場合、片方が繁殖牝馬の放牧地であれば、もう片方は牡馬の放牧地にしないなど、聞いて初めて「なるほどー」と思うことも多々。これは自分のところだけではなく、よその牧場と隣接している場合にもお互い気を付けているそうです。

 「牡馬は1頭で放牧しますが、放牧地の形が台形になっているのは、出入口を狭くして集牧しやすくするためでもあります」とのこと。聞いて初めて、さまざまな工夫を知ることも多々です。友人の話を聞きながら、改めて、競走馬には誰かが注いだ時間と労力がこめられているのだと強く感じました。

 この他、競馬を支える縁の下の頼れる力持ちともいえる「当て馬・乳馬」の生産牧場にもお邪魔しました。こちらは取材でお世話になった元厩務員さんのご実家。跡取りとしてこの春から実家の仕事に携わっていますが、立場は違っても競馬にとって無くてはならない存在であることには変わり有りません。当て馬は種付けシーズンに大忙し。複数頭が交代で任務に当たっています。乳馬は、母馬を失くした仔馬や、育児放棄されてしまった仔馬たちを育て、競走馬としての成長をサポート。「乳馬が必要だということは、母馬に不慮の事態が起こってしまったということなので自分たちからは仕事のPRはできないけれど、必要とされた時にそれに応えられるように準備しておきたい」という言葉が印象的でした。ちなみに母馬が乳馬として出かけて行った仔馬は、人間がミルクを与えて育てているそうで「人に慣れてなつっこくてかわいいですよ」と教えていただきました。

 競走馬の生産、育成、当て馬や乳馬の生産、育成など、牧場の仕事はその種類や形態によってさまざま。そんな中、出会った人々から共通して感じたことは「この仕事が好き」「やりがいを感じている」「もっと良くしていきたい」という前向きな気持ちでした。

 牧場では、これからの競馬を担う若い力を求めています。牧場の仕事に少しでも関心がある方は、6月1日(土)、2日(日)に東京競馬場で行われるBOKUJOBメインフェア、6月22日(土)、23日(日)に行われる関西フェアにぜひ足を運んでみてください。今年もたくさんの良い出会いの場となりますように。
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