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第83回 受け継がれた'競馬場を面白くする'思い

2021.10.25
 前回は、船橋競馬場を舞台にした「ハートビートVR」の成り立ちについてお伝えしました。今回はそのVRをはじめ、騎手インタビューやドローン映像など、受け継がれた「面白い競馬場」の制作現場のお話です。
 現役馬と現役ジョッキーによる模擬レースという、他に類を見ない映像・ハートビートVR。そこには、丁寧に積み上げた厩舎関係者やジョッキー、オーナーサイドとの信頼関係と、何度も確認した安全管理が根本にあると言います。

 「ハートビートVRの撮影は安全が一番。ジョッキーには『もしもの時には、(ヘルメットにつけている)カメラが壊れてもいいから馬と自分を守って』と伝えてあります。事故を起こさないことが一番大切。その上で、ファンの皆さんに喜んでいただける映像が撮れれば」(撮影担当者)。

 騎手会の活動として行っている、リラックスした雰囲気が好評のインタビュー撮影についてもお聞きしました。「コロナ禍で無観客開催が続き、ふれあい広場(競馬場での交流イベント)も開催できなくなってしまいました。そういったことでファンの気持ちが離れてしまい、ジョッキーとの感覚的な距離が開いてしまうことは避けたい。その思いから、できるだけジョッキーの個性や人柄が伝わる映像になるよう心掛けています。船橋のジョッキーのことを知って欲しい。できるだけファンの目に触れる機会を増やしたいですね」。

 以前、1400勝を達成した石崎駿騎手と1000勝を達成した本橋孝太騎手の共同インタビューの撮影現場に同席する機会に恵まれましたが、二人の微笑ましいやり取りも印象的で、繰り返し見てみたくなる楽しい内容でした。
  第83回 受け継がれた 「ハートビートVRにしても、騎手のインタビューにしても、腕の良いジョッキーが揃っているからこそできるのだと思います。インタビューは素に近い状態での笑顔など、少しくだけた感じも出ていますが、真面目にレースに取り組んでいるからこそ、そういった部分も受け入れてもらえるのではと思っています」。

 船橋競馬場の映像といえば、もうひとつ。「船橋ケイバメモリアル(船橋競馬公式YouTube)」などでも使用されているドローン映像も注目を集めています。

 ドローンでの撮影を思いついたのは、故川島正行調教師から託された「競馬場を面白くするんだよ」という言葉をバックボーンに、「新しいことをやっていきたい。思いついたことをやっていこう」という気持ちからだったとのこと。しかし、無謀に進めたわけではなく、安全第一に、まずは屋外に馬や人がいない時間帯に飛ばしたそうです。「音や高さなどの安全性について調教師の皆さんに確認してもらい、(競馬場所有者の)よみうりンドに許可をいただきました。いろいろな方からご理解をいただき、調教時間に飛ばすこともできるようになりました」。そして撮影されたのが、映画のシーンのような、歴史的な記録でもあるあの映像でした。調教中の馬の姿が映る映像からは、競馬場の躍動感や生命力も伝わってきます。

 また、こういったVRやドローンでの撮影は、オーナーの皆さまにも好評とのこと。「あるオーナー様が、愛馬のVRとドローン映像、そして写真を観て『馬主冥利に尽きる』と、とても喜んでくださいました。船橋競馬のオーナー様向けとして、船橋競馬、調教師会ならではのサービスの一環になればと考えていたので、やってよかったなと思いましたよ」とのこと。これを機会に広く知っていただければと思います。

 今回伺ったお話は、どれも「船橋競馬のために」「楽しんでもらえることをしていきたい」という思いが伝わって来る内容でしたが、そのおおもとには故川島正行調教師の「競馬愛」を継続させたい、「これから競馬場を面白くするんだよ」の言葉に込められた熱い想いを受け継いでいきたいという、'馬道の続き'があるように思いました。

 9月末には、ドローンで撮影した風景と共に、船橋競馬騎手会の会長・川島正太郎騎手が工事現場を訪問する「大規模改修工事の'イマ'2021」の映像が船橋競馬場公式YouTubeにアップされました。その他、騎手インタビューもご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてくださいね。


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