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第1回 '買い目'はおれが決めるぜ

2008.04.25
 独立行政法人・日本スポーツ振興センターが販売するサッカーくじ(toto)の売り上げが2007年,約512億円に達した。売り上げが500億円を突破したのは6年ぶりだ。

 01年度に販売がスタートしたtotoは当初,物珍しさも手伝って,初年度は643億円もの売り上げがあった。しかし,その後は当たりにくいことなどが原因で低迷し,06年度には135億円まで落ち込んだ。
 この低迷に歯止めをかけたのが,06年9月に新しく発売された「BIG」だった。Jリーグ14試合の試合結果をコンピューターがアトランダムに選び出す。パターンは勝ち,引き分け,負けの3つ。当選確率は3の14乗分の1。つまり約480万分の1になる。

 1口300円で当選金の最高額は3億円。ただコンピューターが振り分けたくじの中に「的中」がなければ,その回の売り上げは次の回に繰り越される。この繰り越し(キャリーオーバー)が発生した場合,当選金の上限は6億円に跳ね上がる。

 07年度,BIGは34回発売され,このうち28回でキャリーオーバーが発生,7回で6億円の当選金が出た。合わせて14人の「6億円長者」が誕生している。

 BIGはコンピューターが勝手に選ぶため,サッカーの知識がなくても購入することができることから,宝くじファンや女性の取り込みにも成功。07年度のBIGの売り上げは約372億円にのぼった。toto全体の売り上げ512億円のうちの72.7%がBIGに投じられた計算だ。

 赤字に転落し,独立行政法人の見直しで廃止論さえ聞かれたtotoだったが,この調子で売り上げが続けば,累積赤字の200億円も「3年以内に解消できる」といわれるまでの回復ぶりだ。

 BIGの成功に触発されたかのように競輪界が動き出した。この4月から「チャリLOTO」や「Kドリームス」と呼ばれる新型競輪くじをインターネット発売することになった。

 立川競輪が計画している「Kドリームス」は1口200円。1日12レースのうち後半4レースで,上位2着に入る2選手について,コンピューターが乱数表をもとに選んだものを販売する。的中の確率は約168万分の1。的中者がいない場合は売り上げの一部がプールされ,12億円まで繰り越される。最高当選金額は12億円で,BIGの倍。くじの当選金としては国内最高になる。

 購入するためには会員登録が必要で,投票用電子マネーを使用する。クレジットカードやネットバンキングを利用する。

 平塚競輪場の「チャリLOTO」は後半7レースの1着を当てるもので,こちらもコンピューターが勝手に選び出す。的中者がいない場合,最高12億円まで繰り越される。的中確率は478万2969分の1。同競輪場では,1日1000万円程度の売り上げを期待しているという。

 振り返って,競馬界はどうだろう。現行の競馬法では複数のレースにまたがる「重勝式」馬券の発売は可能だ。BIGやチャリLOTOと同様の馬券を売り出そうと思えばできないことはない。一時の話題作り,新規ファンの開拓などメリットもなくはないだろう。

 だが,僕にはどうしてもBIGやチャリLOTOが許せない。

 その最大の理由は,コンピューターが勝手に「買い目」を打ち出す点だ。なぜ26年もの長い間,競馬の魅力にはまってきたか。それは勝ち馬を予想するという行為が面白かったからだ。ああでもない,こうでもない,と飽きもせずに競馬新聞をひっくり返してきたのは,どこかに的中のヒントがあると思っていたからだ。BIGやチャリLOTOはファンの最大の喜びを奪っているように僕には映る。

 6億円も12億円もノドから手が出るほど欲しいが,少なくとも僕は別の方法で手にすることに挑む。予想という喜びのないBIGやチャリLOTOには絶対,手を出すことはない。


JBBA NEWS 2008年4月号より転載
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