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第22回 世代交代

2010.01.01
 ジャパンカップ(JC)ダートでのエスポワールシチーの勝利は,アンバランスだった世代別の勢力図を正常に引き戻す価値ある白星だった。
 ダート界はここ数年,2002年生まれの「ディープインパクト世代」が君臨してきた。中央競馬でいえば,05年のJCダートをカネヒキリが優勝したのを手始めに,06年フェブラリーS(優勝カネヒキリ),07年フェブラリーS(サンライズバッカス),同年JCダート(ヴァーミリアン),08年フェブラリーS(ヴァーミリアン),同年JCダート(カネヒキリ)と,出走できるようになった05年秋のJCダートから08年まで7戦中6戦を「ディープ世代」が制した。

 この世代をリードするヴァーミリアンとカネヒキリは当然のように地方競馬で行われるダートグレード競走にも遠征。次から次へとタイトルを積み上げていった。同世代にはフィールドルージュという強豪もいて,08年の川崎記念でGⅠのタイトルを手にした。

 この世代には地方競馬にも強豪がいた。のちに中央競馬に移籍するボンネビルレコードと短距離に強いフジノウェーブだ。その結果,02年生まれは他の世代と争った中央・地方合わせたGⅠ競走で合計18勝を挙げた。ヴァーミリアンが8勝,カネヒキリが5勝,ボンネビルレコードが2勝,サンライズバッカス,フィールドルージュ,フジノウェーブが各1勝という内訳だ。

 09年のJCダートまで02年生まれが他の世代と対戦できるダートのGⅠ競走は合わせて40レースあったので,半分近くをひとつの世代が優勝するという異常事態が続いていたのだ。

 この流れに変化が表れたのは09年2月のフェブラリーSだった。05年生まれのサクセスブロッケンが優勝し,2着も同世代のカジノドライヴ(USA)と若い世代が上位を独占し,最強世代のヴァーミリアンは3着に敗れた。4着にもサクセスブロッケン,カジノドライヴと同い年のエスポワールシチーが続いていた。

 その後,エスポワールシチーは3月のマーチS(中山競馬場)で初重賞制覇を果たすと,5月のかしわ記念(船橋競馬場)でカネヒキリを下してGⅠ初制覇。10月のマイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡競馬場)でも白星を重ね,JCダートでの完勝に結びつけた。

 層の厚かった02年生まれに陰りが出てきたこともあるが,ようやく05年生まれが台頭してきて,ダート界にも世代交代の波が押し寄せてきた。この分野ではシルクメビウスやスーニ(USA)といった06年生まれも強力で,05年生まれを脅かす存在になりそうな予感がある。

 05年生まれを軸に,ダート界でうまく回転し始めた世代交代だが,芝部門ではまったくうまくいっていない。

 05年生まれが不振なのだ。牝馬限定戦を除く重賞レースで09年に優勝したのは,12月6日現在で,わずかに6頭を数えるのみ。モンテクリスエス(ダイヤモンドS),タケミカヅチ(ダービー卿CT),スマイルジャック(関屋記念),ヤマニンキングリー(札幌記念),キャプテントゥーレ(朝日チャレンジC),オウケンブルースリ(京都大賞典)と簡単に名前を並べられるほどなのだ。

 ひとつ年上の04年生まれは20勝,03年生まれでさえ17勝も挙げているのに,その3分の1ほどの勝ち星しか挙げられていないのは寂しい。09年はカンパニーが頑張り,01年生まれが5勝もしたから,よけいに不振が目立つ。

 不振の最大の要因はこの世代のダービー馬ディープスカイが早々と引退してしまったことだ。3歳の秋には菊花賞を捨てて天皇賞・秋,JCという路線を歩み,3着,2着という結果を残した。

 そのエースを失ったことが痛手になっている。ただ骨折で長期ブランクのあった皐月賞馬キャプテントゥーレと体調を崩していた菊花賞馬オウケンブルースリが復帰。ともに重賞勝ちを収め,再び上昇機運に乗った。年が明けて5歳。この世代の奮起が競馬の盛り上がりには不可欠だ。


JBBA NEWS 2010年1月号より転載
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