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第25回 世代交代

2013.04.10
 昨年7月の函館2歳Sに始まった2013年クラシックレースの重賞戦線で、今年3月のスプリングSまでに25レースが行われ、22頭のステークスウイナーが誕生した。

 新種牡馬のブラックタイドがテイエムイナズマ(デイリー杯2歳S)を送り出し、幸先のよいスタートを切ったかと思えば、フジキセキはタマモベストプレイ(きさらぎ賞)とメイケイペガスター(共同通信杯)を生み出し、これで初年度から15世代連続で重賞勝ち馬を誕生させるという驚異的な記録を作り出した。

 また無名に近い種牡馬たちの活躍も今季の特徴だ。
 フェアリーSを制したクラウンロゼの父はロサードである。「バラ一族」として知られる名牝系の出身で、近親にはローズキングダムなどがいる良血だ。現役時代にオールカマーなど重賞を5勝した実績を持つが、11度挑戦したGⅠレースではついに勝てずに終わった。
 初年度こそ32頭に種付けしたものの、08、09年生まれからは勝ち馬を送り出すことができず、クラウンロゼと同じ10年生まれは種付頭数6頭で生産頭数3頭というところまで人気が落ち込んだ。そんな風に追い込まれたところで孝行娘が出現するのだから、物事あきらめてはいけないと思う。

 ローエングリンは年明けのスプリングSを快勝して、皐月賞の有力候補になったロゴタイプという「クリーンヒット」を放った。昨年暮れの朝日杯FSではロゴタイプが優勝し、もう1頭の産駒ゴットフリートも3着に食い込んでみせた。それでもローエングリンの昨年のJRAにおける種牡馬成績は62位にとどまった。

 ほかにもスズカマンボ(メイショウマンボ)やオンファイア(ウキヨノカゼ)といった種牡馬は生涯初の重賞勝ち馬をこの3歳世代から生み出している。

 ランキングでベスト10にも入らない種牡馬の産駒が活躍していることの裏返しが、エースの不振だ。野球にたとえると、下位打線ばかりが打ち、中軸に当たりが出ていないのだ。そうディープインパクトの不振が今年のクラシック戦線を軸馬不在でなんとなく頼りないものにしている原因だと思う。

 特に昨年のディープインパクトは恐るべき威力を見せた。昨年同時期に、ディープインパクトはすでに7頭もの重賞勝ち馬を送り出していた。順に名前を挙げると、ディープブリランテ、ジョワドヴィーヴル、アダムスピーク、ジェンティルドンナ、ベストディール、ワールドエース、ヴィルシーナとなる。後のダービー馬、3冠牝馬とそうそうたるメンバーがそろっていた。

 これに対し、今年ここまでに現れた重賞勝ち馬はカミノタサハラ(弥生賞)1頭だけ。昨年の猛威がうそのような低迷だ。かと言って全体の成績が落ちているわけではなく、世代別のランキングで10年生まれの獲得賞金ではディープインパクトは相変わらずトップだし、全体でも堂々の1位を走っている。

 ディープインパクトの父サンデーサイレンス(USA)の歴史を調べてみたところ、とても興味深いことがわかった。あの怪物種牡馬も3年目に不振に陥っていたのだ。

 94年に産駒が走り始めたサンデーサイレンスは初年度から「ホームラン」を連発した。95年にはジェニュインが皐月賞を制し、タヤスツヨシがダービー馬に輝いた。オークスもダンスパートナーが勝っている。翌96年もイシノサンデー(皐月賞)、ダンスインザダーク(菊花賞)と2頭のクラシック馬を送り出した。

 ところが3年目は1頭もクラシック馬を出すことができなかった。98年から3年連続のダービー制覇など輝かしい成績を残しているのに、なぜか3年目に「空白の時代」がある。ディープインパクトが父サンデーサイレンスと同じ「3年目のジンクス」に屈するのか、それとも、ここから巻き返すのか。クラシック戦線の見どころが一つ増えた。

連載再開について
「第5コーナー~競馬余話~」は、2010年4月号から休載していましたが、今月号から再開となりました。
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