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第36回 波乱の主役

2014.03.13
 2月23日に東京競馬場で行われたJRA今年最初のGⅠレース、第31回フェブラリーSは単勝16番人気のコパノリッキーが優勝し、競馬ファンをアッと驚かせた。
 16頭立ての13番枠からスタートすると、逃げるエーシントップ(USA)を見ながら、2番手でレースを進めた。田辺裕信騎手(30)は「砂をかぶらないよう気をつけた」という。馬群でもまれるのを避けて、気分良く走らせることを心がけた。ゴールまで残り400メートルあたりで先頭に立ってからも追い出しをぎりぎりまでがまんした。2番人気のホッコータルマエに外から並びかけられたが、粘りに粘った。半馬身差をつけて飛び込んだ先が栄光のゴールだった。

 出走16頭中最低の16番人気。1984年にグレード制が導入されて以降、中央競馬のGⅠレースで最低人気馬が優勝したのは、これが4度目のことだった。1989年のエリザベス女王杯で20頭立て20番人気のサンドピアリスが最初で、2度目は2000年のスプリンターズS、16番人気のダイタクヤマトが記録した。3度目は障害レース、2001年の中山大障害で10番人気のユウフヨウホウが優勝している。

 コパノリッキーは2013年5月に地方・園田競馬場であった兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ、ダート1870メートル)で2着のベストウォーリアに6馬身もの差をつけて快勝。この時点で3歳最強ダートホースという評価を受けていた。ところが好事魔多し。ダービー出走を目指していたが、右前脚の骨折が見つかり、戦線を離脱した。11月の霜月Sで復帰を果たすが、1番人気で10着。続く12月のフェアウェルSでも3番人気で9着と期待を裏切る結果しか残せなかった。復帰後2度の敗戦がコパノリッキーの人気を大きく落とす要因になった。また出走できるかどうかも未確定で、ケイアイレオーネとの抽選待ちという状況だった。

 村山明調教師は今回のレースに向け、トレーニング法を変えたという。坂路中心だったのを負荷をかける意味でウッドチップコースでの調教を採り入れるようにした。松田国英調教師や角居勝彦調教師の下で働き、クロフネ(USA)やキングカメハメハ、ウオッカなどの手綱を取った経験のある村山調教師がそこで感じたのは「一流馬には強い調教が必要」ということだった。能力が高いことがわかってはいても一度骨折をしているコパノリッキーにはどうしても手加減することになっていた。心を鬼にして調教量を増やした結果がフェブラリーSの優勝につながった。

 コパノリッキーは父ゴールドアリュール、母コパノニキータ、母の父ティンバーカントリー(USA)という血統。父ゴールドアリュールも2003年のフェブラリーSを制しており、父子2代制覇となった。2010年に優勝したエスポワールシチーもゴールドアリュール産駒だった。

 4歳馬の優勝はフェブラリーSがGⅠレースに昇格した1997年以降では、シンコウウインディ(1997年)、ゴールドアリュール(2003年)、メイショウボーラー(2005年)、カネヒキリ(2006年)、サクセスブロッケン(2009年)に次ぐ記録だった。

 コパノリッキーの単勝配当は27,210円。サンドピアリスの43,060円に次いでGⅠ史上2番目の高配当になった。しかし旧8大競走にまで範囲を広げるともっとすごい単勝配当を残した馬がいる。1949年のダービー優勝馬タチカゼだ。23頭が出走したレースは圧倒的な1番人気に支持されたトサミドリが逃げる予想外の展開になった上、2頭が落馬、1頭が競走中止する波乱が起きた。先頭でゴールしたタチカゼは19番人気で単勝の配当は55,430円。この高配当の記録はいまだに破られることなくGⅠ級レースのレコードとして生き残っている。
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