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第39回 因縁の対決

2014.06.12
 5月25日に東京競馬場で行われた第75回優駿牝馬(オークス)は2番人気のヌーヴォレコルト(牝3歳、美浦・斎藤誠厩舎)が優勝した。残り200㍍付近で先頭に躍り出ると懸命に追いすがるハープスター(牝3歳、栗東・松田博資厩舎)をクビ差抑えてゴールした。
 ヌーヴォレコルトとハープスターはこれが3度目の対決だった。初顔合わせは3月のチューリップ賞。桜花賞トライアルのこのレースはハープスターが優勝。ヌーヴォレコルトは2馬身半離された2着になった。2度目の対戦は4月の桜花賞。この時もヌーヴォレコルトはハープスターの末脚に屈して3着に終わった。ただ同じ阪神競馬場の同じ芝1600㍍のレースで、その差はクビ+4分の3馬身差に詰まっていた。

 3度目の対決となったオークスがこれまでの2戦と違っていたのは、開催地だった。チューリップ賞と桜花賞の舞台がともに阪神競馬場だったのに対し、オークスは東京競馬場で行われた。ヌーヴォレコルトが東京競馬場でレースをするのはデビュー戦と2戦目に続いて3度目。勝手のわかったホームゲームだった。ヌーヴォレコルトが初めてホームでハープスターを迎え撃ったのがオークスだった。あまりにハープスターのパフォーマンスが優れていたため、この「地の利」という視点が欠けていた。レース後に気がついた。

 レース後に気づいたことがもう一つあった。ハーツクライ産駒がGⅠ制覇を果たす時、2着はいつもディープインパクト産駒。そして、それは父の代から続く因縁のようなものだ、ということに。

 2005年の有馬記念はディープインパクト一色だった。デビューから7戦無敗の成績で3冠を制覇。史上6頭目の3冠馬は勇躍、有馬記念に向かった。当然のように1番人気に支持され、単勝オッズは1.3倍。前年の覇者ゼンノロブロイは6.8倍の2番人気に追いやられた。レースでディープインパクトはいつものように後方を進んだ。中山競馬場の2周目3コーナーすぎからスパートした。ディープインパクトの機先を制したのがハーツクライだった。

 追い込み戦法を常にしていたハーツクライだったが、この日は一転して先行した。クリストフ・ルメール騎手の奇策だった。だが奇策は当たる。一歩早く抜け出したハーツクライを追ってディープインパクトが迫ったが、半馬身差をつけ、ハーツクライは先頭でゴールした。4番人気だったハーツクライはこれが初のGⅠ制覇であり、白星は3歳5月の京都新聞杯以来1年7ヵ月ぶりだった。国内13戦でディープインパクトが敗れたのは、この有馬記念だけ。ハーツクライはこの時、ディープインパクトの「天敵」になった。

 歴史は繰り返す。昨年10月、東京競馬場で行われた第148回天皇賞・秋はジェンティルドンナが1番人気に支持されていた。3月にドバイに遠征し、ドバイ・シーマクラシックで2着。帰国初戦の宝塚記念は3着とこの年まだ勝ち星に恵まれていなかった。それでも前年のジャパンカップでオルフェーヴルを下した実力は高く評価されていた。当然の1番人気だった。

 しかしディープインパクトの娘は2番手から伸び切れなかった。勝ったのは5番人気だったジャスタウェイ。ハーツクライ産駒として初のGⅠ制覇だった。

 そして今回のオークスである。圧倒的な支持を集めたディープインパクトの娘ハープスターに土をつけたのは、またしてもハーツクライの娘ヌーヴォレコルトだった。ハーツクライ産駒は今回のオークスでJRA重賞16勝となった。しかし2着がディープインパクト産駒だったのは、他には12年のアルテミスS(コレクターアイテム=アユサン)のみである。3例のうち2例がGⅠレースというのだから因縁というしかない。

 岩田康誠騎手はこれでクラシック完全制覇を達成した。これは地方競馬出身の騎手としては初の快挙だった。オークスの日の第3レースで中央競馬に移籍後のJRA通算1,112勝目を挙げ、同じく地方競馬出身の安藤勝己元騎手の持つ1,111勝の記録を塗り替えたばかり。二重の意味で記念の1日になった。
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