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第51回 「ジンクス」

2015.06.12
 NHKマイルカップは皐月賞で5着だった単勝3番人気のクラリティスカイが優勝、父クロフネ(USA)に続く同レース史上初の父子2代制覇を果たした。
 今年20回目を迎えたNHKマイルカップは創設された当初「マル外(外国産馬)のダービー」と呼ばれた。出走馬の大多数を外国産馬が占め、当然のように上位を独占した。創設の1996年からタイキフォーチュン(USA)、シーキングザパール(USA)、エルコンドルパサー(USA)、シンボリインディ(USA)、イーグルカフェ(USA)、そしてクロフネと外国産馬が6連覇を果たした。

 エルコンドルパサーが優勝した1998年は外国産馬の全盛期だった。中央競馬の登録馬6,453頭のうち12.71%に当たる820頭が外国産馬や外国調教馬で、総獲得賞金は123億2,395万5,000円に達した。総賞金に占める外国産馬の獲得賞金の割合は18.49%。登録数の割合を上回り、1頭当たりの獲得賞金も内国産馬より多かった。

 そんなNHKマイルカップが今ではすっかり様変わりし、内国産の3歳ナンバーワンマイラー決定戦の様相を呈してきた。

 新しい時代にふさわしくクラリティスカイは過去の優駿が突き破れなかったジンクスを初めて克服した。それは皐月賞からの出走によるNHKマイルカップ制覇だ。昨年までの19年で43頭が同じローテーションでNHKマイルカップに挑み、ただの1頭も優勝馬を出すことはできなかった。

 2002年のタニノギムレットは皐月賞でノーリーズンの3着になったのをステップにNHKマイルカップに出走して3着。テレグノシスとアグネスソニックに先着を許した。タニノギムレットはNHKマイルカップの後、ダービーに挑み、見事に優勝を果たしている。2004年のメイショウボーラーも皐月賞ではダイワメジャーの3着になり、NHKマイルカップではキングカメハメハ、コスモサンビームに続く3着だった。皐月賞組はNHKマイルカップを勝てないというジンクスは創設20年目にして破られた。

 NHKマイルカップの翌週、4歳以上の牝馬によるGⅠレース、ヴィクトリアマイルでもジンクスは破られた。5番人気のストレイトガールが10回目にして初めて6歳での優勝を果たした。

 ヴィクトリアマイルは4歳が強いレースだ。過去の9年で82頭が出走して6勝、2着7回、3着3回という成績を残してきた。これに続くのが5歳。48頭が出走し、3勝、2着2回、3着4回という実績だった。6歳以上のベテランは不振で30頭が出て、0勝、2着もなく、2頭が3着に入ったことがあるだけだった。

 今年も前評判はデータ通りになった。1番人気は前年のオークス馬で4歳のヌーヴォレコルト、2番人気は5歳のディアデラマドレ、3番人気は4歳レッドリヴェール、4番人気は5歳カフェブリリアント。6歳のストレイトガールは前走の高松宮記念で1番人気に支持されながら13着に惨敗したことで、ようやく5番人気になったぐらいだった。

 しかし終わってみれば、これまで連対したこともなかった6歳のストレイトガールとケイアイエレガントが1、2着を占めた。おまけに最低18番人気のミナレットが逃げ粘って3着になったため3連単の配当は2,070万円とGⅠ史上最高、JRA史上2番目となる大波乱になった。ジンクスが破られる時というのは、こうしていっぺんにひっくり返されるものなのだろうか。

 1984年にグレード制が導入されて以降、6歳牝馬が中央競馬のGⅠレースを制したのはストレイトガールが2頭目だった。過去の1例は1989年ジャパンカップのホーリックス(NZ)である。ストレイトガールは内国産牝馬として初の快挙を達成したことになる。

 こうしてみると、克服されていないジンクスはまだまだありそうだ。ダービーを控えた今、一生懸命ジンクス探しをしている。もちろんジンクスを逆手に取って、馬券でもうけようというのが動機だ。
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