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第81回「ミルコ」

2017.12.18
 エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ。京都競馬場で2週続けて、ミルコ・デムーロ騎手(38)の「神騎乗」を目の当たりにした。
 スローペースになったエリザベス女王杯では騎乗馬モズカッチャンを先行させ、逃げ込みをはかるクロコスミアをゴール寸前で差し切り、クビ差の勝利を飾った。翌週のマイルチャンピオンシップでは一転して後方待機策。大外18番枠という不利な枠からスタートしたペルシアンナイトを序盤は馬群の後方に置き、最後の直線で末脚を爆発させた。2番人気のエアスピネルにハナ差勝ち。接戦をものにした。

 この勝利によって、M・デムーロ騎手は歴代最多勝記録と並ぶ中央競馬のGⅠ年間6勝目をマークした。年間GⅠ6勝はこれまでに武豊(2度)、安藤勝己、池添謙一、岩田康誠と4騎手が記録していたが、ゴールドドリーム(フェブラリーS)、サトノクラウン(宝塚記念)、レッドファルクス(スプリンターズS)、キセキ(菊花賞)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)、ペルシアンナイト(マイルチャンピオンシップ)。6勝とも違う馬に騎乗して記録したのはM・デムーロ騎手が初めてだった。

 また5月のオークスに始まったGⅠレースでの連続複勝圏内ゴールという記録も10レースに伸ばした。その内容はオークス3着(アドマイヤミヤビ)→ダービー3着(アドミラブル)→安田記念3着(レッドファルクス)→宝塚記念1着(サトノクラウン)→スプリンターズS1着(レッドファルクス)→秋華賞3着(モズカッチャン)→菊花賞1着(キセキ)→天皇賞・秋2着(サトノクラウン)→エリザベス女王杯1着(モズカッチャン)→マイルチャンピオンシップ1着(ペルシアンナイト)というものだ。驚異的な実績というしかない。

 「ミルコは大レースに強い」と言われている。短期免許で初めて騎乗した1999年12月以降2017年11月19日までの中央競馬での全成績は4,361戦760勝、2着575回、3着455回、4着以下2,571回だ。勝率は17.4%、連対率は30.6%、3着内率は41.0%となる。GⅠではどうか。

 127戦24勝、2着11回、3着14回、4着以下78回。勝率は18.9%、連対率は27.6%、3着内率38.6%だ。確かに勝率は高い。しかし連対率や3着内率は通算成績より低い。印象ほど大レースに強いわけではない。

 けれどもデータの取り方を変えると大きな変化がわかる。

 短期免許時代と通年免許になってからの成績だ。短期免許時代は2,378戦354勝、2着296回、3着232回、4着以下1,496回。勝率14.9%、連対率27.3%、3着内率37.1%という成績だった。それが通年免許になった2015年3月以降はというと、1,983戦406勝、2着279回、3着223回、4着以下1,075回。勝率20.5%、連対率34.5%、3着内率45.8%となる。いずれの数字も大幅なアップを示している。

 上限3か月という短期免許は不安定な立場だった。また同じ馬に連続して騎乗することができないため、先を見据えた「教育的騎乗」が不可能で、その場限りの騎乗になりがちだった。

 ゴールドドリーム、キセキ、モズカッチャンは前任の騎手からバトンを受け、連続して騎乗した3戦目にGⅠ勝利をもたらしている。これが連続騎乗のいいところだろう。騎乗馬との息を合わせる「助走」があって、勝負をかける大レースに結びつけているのだ。

 M・デムーロ騎手の成績を調べてみて、改めて気づいたことがあった。接戦に強いのだ。マイルチャンピオンシップで中央競馬のGⅠ勝利は通算24勝となったが、このうち10勝は2着馬と同タイムの決着だ。しかも、このうち4勝が今年に集中している。競馬界には「ハナ、アタマの勝利は騎手の腕」という言い方がある。今年のミルコは手がつけられない。
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