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第105回 「父娘」

2019.12.10
 2019年11月10日に行われた第44回エリザベス女王杯はクリストフ・スミヨン騎手(38)=ベルギー=が騎乗した3番人気のラッキーライラック(牝4歳、栗東・松永幹夫厩舎)が優勝した。
 スミヨン騎手の中央競馬でのGⅠ勝利は5年ぶり3度目だった。初勝利は2010年の天皇賞・秋、ブエナビスタとのコンビで2着のペルーサに2馬身差の快勝だった。2勝目は2014年のジャパンカップ。エピファネイアに騎乗してジャスタウェイに4馬身差をつける完勝劇を演じた。

 スミヨン騎手が中央競馬の短期免許を取得して、初めて来日したのは2001年2月のことだった。小倉、京都、阪神で48戦し、6勝を挙げた。その後、国際騎手招待競走や短期免許で何度も来日し、素晴らしいプレーを披露した。初めての重賞勝ちは2009年のスワンステークス。4番人気だったキンシャサノキセキを勝利へ導いた。

 翌2010年秋、ブエナビスタとのコンビで優勝争いを繰り返した。天皇賞・秋制覇、ジャパンカップは1位で入線したが、進路妨害で2着に降着、有馬記念も2着となった。スミヨン騎手の名をさらに有名にしたのは3冠馬オルフェーヴルとのコンビ結成だった。2012、2013年のフランス遠征では、計4戦で手綱を取り、凱旋門賞は2年連続2着、フォワ賞は2連覇を果たした。

 エリザベス女王杯優勝に導いたラッキーライラックはオルフェーヴルの初年度産駒の1頭である。追い切りでも手綱を取り、「彼女がオルフェーヴルの娘だということに縁を感じていた。あのときの雪辱を果たした気持ちだ」と優勝インタビューで答えた。2012年の凱旋門賞では、いったん先頭に立ちながら、オルフェーヴルが自ら走りのバランスを崩して、ソレミアに敗れ、大魚を逃した。その悔しさをスミヨン騎手は忘れていなかったのだ。エリザベス女王杯で優勝した翌週もゴルトファルベン、バイオスパークというオルフェーヴル産駒に騎乗して、いずれも勝利を飾るという成績を残した。

 今回のように短期免許などで来日した外国人騎手が日本調教馬に騎乗して中央競馬のGⅠレースを制覇する例が増えている。2015年3月に中央競馬会所属になったミルコ・デムーロ騎手、クリストフ・ルメール騎手も短期免許の時代にGⅠ制覇を達成しており、この記録を含めると、2019年11月24日現在、外国人21騎手が計56勝を挙げている。

 嚆矢となったのはマイケル・ロバーツ騎手だった。1991年にジャパンカップでテリモン(Terimon(GB))に騎乗するため初来日。その後、1995年2月から5月まで短期免許を取得し、日本で騎乗した。短期免許を得た外国人騎手としてはリサ・クロップ騎手、アラン・ムンロ騎手、オリビエ・ペリエ騎手に次いで4人目のことだった。同年のジャパンカップではランドに騎乗して優勝した。そして4度目の短期免許で来日した1998年12月13日、第50回朝日杯3歳ステークス(現朝日杯フューチュリティステークス)でアドマイヤコジーンに騎乗して優勝。外国人騎手が日本調教馬とのコンビで獲得した初めてのGⅠタイトルとなった。

 変わったところでは2002年12月21日の中山大障害。ニュージーランドの女性騎手ロシェル・ロケットが日本のギルデッドエージで優勝していること。障害のJ・GⅠでは唯一の優勝例だ。

 最多勝はオリビエ・ペリエ騎手の12勝。2000年のフェブラリーステークス(ウイングアロー)に始まり、2005年のマイルチャンピオンシップ(ハットトリック)まで6年間で達成した。2004年にはゼンノロブロイとのコンビで天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念と秋の古馬3冠を制覇した。

 2019年は新しいメンバーが2人加わった。ダミアン・レーン騎手とオイシン・マーフィー騎手だ。オーストラリア出身のレーン騎手はノームコアでヴィクトリアマイル、リスグラシューで宝塚記念を制し、アイルランド生まれのマーフィー騎手はスワーヴリチャードに乗ってジャパンカップで優勝した。レーン騎手は25歳、マーフィー騎手は24歳と若い。外国人騎手と日本調教馬のコラボレーションはこれからも増えていきそうだ。

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