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第108回 「牝馬」

2020.03.11
 2020年2月は特別な2月になった。性別を問わないJRAの重賞レースで牝馬が頑張り、好成績を収めたのだ。
 2日に京都競馬場で行われた第25回シルクロードステークスでは、18頭立てで3番人気だったアウィルアウェイ(牝4歳、栗東・高野友和厩舎)が優勝。2着にも6番人気のエイティーンガール(牝4歳、栗東・飯田祐史厩舎)が食い込んだ。10頭が出走していた牡馬はナランフレグが3着になったのが最高だった。

 芝1200㍍で争われるシルクロードステークスで牝馬が1、2着を独占したのは6年ぶりのことだった。

 翌週の9日、東京競馬場であった第70回東京新聞杯では16頭立て4番人気のプリモシーン(牝5歳、美浦・木村哲也厩舎)が1着となり、6番人気のシャドウディーヴァ(牝4歳、美浦・斎藤誠厩舎)が2着になった。東京新聞杯で牝馬が優勝したのは2018年のリスグラシュー以来2年ぶりで史上10頭目だったが、牝馬の1、2着独占となると1978年までさかのぼらなければならないほどの珍事だった。


 42年前の東京新聞杯は現在の芝1600㍍とは違って、芝2000㍍で開催されていた。優勝したのは中島啓之騎手が手綱を取ったスズサフラン(牝5歳、仲住芳雄厩舎)。2着は吉永正人騎手のシービークイン(牝5歳、松山吉三郎厩舎)だった。

 スズサフランは現役時代に計7勝を挙げたが、東京新聞杯が最後の勝ち星となった。翌年まで走り、繁殖牝馬になった。繁殖生活の中で送り出した最高傑作はラッキーソブリン(USA)との間に産んだスズマッハだ。通算21戦3勝、重賞レースはエプソムカップの1勝だけと勝ち星には恵まれなかったが、1984年のダービーではシンボリルドルフの2着、1985年の安田記念ではニホンピロウイナーの2着とGⅠ戦線でも活躍した。

 面白いのは、東京新聞杯でスズサフランの2着になったシービークインも、スズサフランと同様、繁殖牝馬になってから競馬史に名を刻んだことだ。

 シービークインの唯一の産駒はミスターシービー(父トウショウボーイ)だ。1983年に皐月賞、ダービー、菊花賞を制し、セントライト、シンザンに次ぐ史上3頭目の3冠馬になり、4歳秋には天皇賞でも優勝した。
 シルクロードステークス、東京新聞杯と2週続けて牝馬のワンツーが起こり、びっくりしていたら、16日の第113回京都記念(京都競馬場)でも同じことが起きた。二度あることは三度ある、だ。

 伝統のレースを制したのは2019年の秋華賞馬クロノジェネシス(牝4歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だった。2着になったのは前年のジャパンカップで2着だったカレンブーケドール(牝4歳、美浦・国枝栄厩舎)である。並み居る牡馬を相手にクロノジェネシスが1番人気、カレンブーケドールが2番人気の支持を受け、その通りの結果を出した。大したものだ。

 2019年に性別を問わないJRA重賞で牝馬が1、2着を独占したのは年間で3度しかなかったのが、2020年2月はたった1か月で達成された。

 近年の牝馬の強さは目を見張るものがある。何よりの証拠がJRA賞の年度代表馬だろう。

 2010年がブエナビスタ、2012年と2014年がジェンティルドンナ、2018年がアーモンドアイ、そして2019年がリスグラシューと最近10年で半分の5回は牝馬が年度代表馬に選ばれている。

 最近の「牝馬の時代」が始まったのはウオッカとダイワスカーレットがそろった2004年世代が出てきたころからだ。両馬が真っ向勝負を演じた2008年の天皇賞・秋は今でも語り継がれる名勝負だ。スタートから先頭に立ち、逃げ込みを図るダイワスカーレットにゴール前、ウオッカ以下が襲いかかる。写真判定の結果は約2センチ差でウオッカがダイワスカーレットを捉えていた。3着ディープスカイも2着ダイワスカーレットとはクビ差。さらにハナ差で4着のカンパニーが続き、クビ差で5着のエアシェイディという大接戦だった。

 このように性別を問わないJRAのGⅠで牝馬が1、2着を独占したのは2013年のジャパンカップが最後だ。ジェンティルドンナが優勝し、デニムアンドルビーが2着になった。

 今年の牝馬には7年ぶり5度目の快挙が達成されそうな勢いがある。

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