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第115回 「龍王」

2020.10.12
 2020年9月13日、安田隆行調教師(67)が快記録を達成した。達成したのは「同一調教師の1日重賞2勝」だ。中央競馬では史上18度目のことだった。
 
 まず中京競馬場で行われたセントウルSでダノンスマッシュ(牡5歳)が1番人気に応えて快勝すると、その10分後に中山競馬場で行われた京成杯オータムHではトロワゼトワル(牝5歳)がゴール寸前でひと伸びし、ハナ差の接戦を制して昨年に続く2連覇を果たした。

 1日重賞2勝を最初に達成したのは、1954年10月17日の伊藤勝吉調教師だ。1954年といえば日本中央競馬会(JRA)が創立された年。伊藤勝吉調教師は1961年に最多勝に輝くなどJRA通算657勝。JRA以前の1949年にタチカゼでダービーを制するなどクラシック7勝を挙げた名調教師だ。

 この日、伊藤勝吉調教師の管理馬フアイナルスコア(牡4歳)が京都記念・秋を制し、ロイヤルウツド(牡4歳)が目黒記念・秋で優勝している。JBISサーチによると2頭はともにニュージーランド産。とても珍しいケースだ。

 1日重賞2勝はその後しばらく空白期間があり、橋本輝雄調教師が1969年10月5日にマークするまで約15年もの間達成されなかった。アカネテンリュウ(牡3歳)は夏の函館で2勝を挙げた勢いそのままに初めての重賞セントライト記念に挑み、ダービー2着のミノルを破り、優勝。菊花賞制覇へと結びつけた。同じ日、マツセダン(牡3歳)が前年のオークス馬ルピナス以下を下し、七夕賞で優勝。こちらも初重賞制覇を果たした。伊藤勝吉調教師、橋本輝雄調教師に続いた達成者は次の通りだ。

■坂口正二調教師(1973年6月3日)宝塚記念ハマノパレード、読売Cハマノカゲ
■服部正利調教師(1975年4月13日)マイラーズCキタノカチドキ、小倉大賞典ロッコーイチ
■矢野照正調教師(1985年11月17日)アルゼンチン共和国杯イナノラバージョン、福島記念ブラックスキー
■栗田博憲調教師(1987年2月15日)きさらぎ賞トチノルーラー、共同通信杯4歳Sマイネルダビテ
■伊藤雄二調教師(1991年1月27日)京都牝馬特別ダイイチルビー、クイーンCスカーレットブーケ
■伊藤雄二調教師(1995年12月23日)ラジオたんぱ杯3歳Sロイヤルタッチ、フェアリーSマックスロゼ
■橋口弘次郎調教師(1998年9月6日)新潟3歳Sロサード、小倉3歳Sコウエイロマン
■藤沢和雄調教師(2003年2月2日)東京新聞杯ボールドブライアン、京都牝馬Sハッピーパス
■小島太調教師(2005年2月6日)共同通信杯ストーミーカフェ、シルクロードSプレシャスカフェ
■角居勝彦調教師(2007年5月27日)ダービー ウオッカ、目黒記念ポップロック
■音無秀孝調教師(2009年10月11日)毎日王冠カンパニー、京都大賞典オウケンブルースリ
■堀宣行調教師(2012年6月3日)安田記念ストロングリターン、ユニコーンSストローハット
■尾関知人調教師(2015年3月7日)オーシャンSサクラゴスペル、チューリップ賞ココロノアイ
■堀宣行調教師(2016年8月21日)札幌記念ネオリアリズム、北九州記念バクシンテイオー
■音無秀孝調教師(2017年2月5日)東京新聞杯ブラックスピネル、きさらぎ賞アメリカズカップ

 2度達成した伊藤雄二調教師、音無秀孝調教師、堀宣行調教師が目立つ。このうち堀宣行調教師は安田記念とユニコーンS、同じ日に同じ東京競馬場で同じ福永祐一騎手とのコンビで達成したユニークな記録を持つ。橋口弘次郎調教師と堀宣行調教師はそれぞれドバイと香港で1日重賞2勝を達成していることも忘れてはならない。

 安田隆行調教師の1日重賞2勝には過去の17例にない唯一の記録が重なった。ダノンスマッシュもトロワゼトワルも、ともにロードカナロア産駒という共通点を持っていたのだ。この日達成されたのは「同一調教師の同一種牡馬による1日重賞2勝」という史上初めての快記録だった。ロードカナロアは安田隆行調教師が育てた最高傑作。さぞ気持ちのいい1日だっただろう。
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