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第123回 「効率」

2021.06.18
 5月16日に東京競馬場で行われた第16回ヴィクトリアマイルはオッズ1.3倍の断然人気に推されたグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が快勝した。
 道中、中団を進んだグランアレグリアは最後の直線に向かうと自分からハミを取って、末脚を爆発させた。ラスト3ハロンは32秒6。メンバー18頭中最速の上がりで2着のランブリングアレーに4馬身差をつけた。レベルの違う強さに、ただ驚くばかりだった。

 これでGⅠ勝利は5つ目。2019年の桜花賞、2020年の安田記念、スプリンターズS、マイルチャンピオンシップにヴィクトリアマイルが加わった。古馬が出走できるマイルGⅠはヴィクトリアマイル、安田記念、マイルチャンピオンシップの3レースしかないが、その完全制覇を史上初めて達成した。もっとも、ヴィクトリアマイルが該当レースであることから、牡馬は逆立ちしてもできない記録ではある。

 グランアレグリアが通算12戦8勝の成績で獲得した賞金は8億4,903万7,000円になった。

 国外を除いたJRAの競走での歴代獲得賞金ナンバーワンはキタサンブラックで18億7,684万3,000円だ。キタサンブラックはこの賞金を20戦12勝の成績で獲得した。1レースごとの賞金を比べてみる。キタサンブラックは1レース当たり9,384万円あまりを稼いだ。1着賞金3億円のジャパンカップや有馬記念の優勝が1レース当たりの賞金獲得額を引き上げた。キタサンブラックは長距離を得意とするステイヤーだったため、走った距離は長い。20戦の合計は46,700メートルに達した。キタサンブラックの賞金を距離単位で計算してみると、1メートル当たりの獲得賞金は40,189円あまりとなる。

 グランアレグリアはどうか。1レース当たりの獲得賞金は7,075万円あまりとキタサンブラックと比べると2,000万円以上少ない。ところがマイル中心のローテーションであるため走った距離の合計は12戦で18,600メートルだ。獲得賞金を1メートル換算すると、その額は45,647円あまりで、キタサンブラックを逆転する。効率よく賞金を上乗せしているグランアレグリアのすごさはこんなことでも分かる。

 今回のヴィクトリアマイルでは、もう一つの記録も達成された。ディープインパクト産駒による上位独占だ。

 1着グランアレグリア、2着ランブリングアレー、3着マジックキャッスルと3頭ともディープインパクト産駒だった。このレースには3頭のほかにも7頭の「ディープ娘」がそろい、計10頭が出走していた。ディープインパクト産駒が同一GⅠに多頭数出走した例としては2015年の天皇賞・秋の9頭がこれまでの最多記録だった。このときはステファノスの2着が最高の成績で、多頭数出走が成績に結びついてはいなかった。ちなみに、同一種牡馬が同一GⅠに多くの産駒を送り出した最多記録はサンデーサイレンス(USA)が2004年の秋華賞でマークした11頭だ。

 GⅠレースでディープインパクト産駒が1着から3着までを独占するのは今回が3度目だった。過去の2例はいずれも2016年、同じ3頭が上位を占めた。皐月賞ではディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンドの順でゴールし、1カ月後のダービーではマカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティと順位が変わった。

 ヴィクトリアマイルの前日、東京競馬第5レースでシテフローラルが1着となり、ディープインパクト産駒のJRA通算2,400勝が達成された。

 ディープインパクト産駒が初めて出走したのは2010年6月20日、阪神競馬第4レースだった。父と同じ池江泰郎調教師に育てられたシュプリームギフトが内田博幸騎手の手綱でデビューした。1番人気に支持されたが、結果は3着に終わった。初勝利は翌週6月26日の福島競馬。1番人気のサイレントソニック(牝2歳、美浦・国枝栄厩舎)が蛯名正義騎手とのコンビで見事に逃げ切った。以来10年10カ月あまりをかけて2400の白星を積み上げてきた。父のサンデーサイレンスが11年7カ月かけて2,400勝したのを上回るペースだ。父サンデーサイレンスが残した2,749勝というJRA最多勝記録まで残り約350勝足らず。

 ディープインパクトが天国に旅立って、間もなく2年になる。残り少なくなっていく産駒だが、スーパー種牡馬の存在感にはまだ、衰えはない。
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