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第13回 日本中の人々が心を一つに...

2011.04.08
 東日本大震災,被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
 突然に起こった惨劇。連日報道される映像に心が痛み,目を背けられた方も多いことと思います。一瞬にして,人・家・街が消え去る状況。何と言っていいか...言葉を失います。そこにきて,原発の問題。今回の地震に伴い起こった,津波,火事,原発,多くの方々の命が奪われるとともに,次から次へと出てくる難題。人間1人1人に,問題提起されているような,そんな気がしてなりません。とにかく被災地の1日も早い復興を願うばかりです。

 さて地震当日,美浦トレーニングセンターも,かなりの揺れが生じ,地割れや断水,厩舎の壁にひびが入るなどといった被害に見舞われた様子。

 その時の状況を伺うと,まず人間が揺れを感知する前に馬が気づき,いっせいに鳴きはじめ,ソワソワとした状態になったとのこと。ビックリして馬房から飛び出した馬,厩務員さんの曳き手を振り払い放馬した馬もいたようですが,時間帯が調教時間からずれていたこともあり,人馬共に大事に至らなかった様子。阪神・淡路大震災の時もそうでしたが,もし調教中に起こっていたらと考えると,ゾッとします。

 一度競馬学校時代,騎乗中に地震に見舞われたことがあるのですが,やはりその時も,馬のほうが早く察し,パニックに。あまりにも突然のことで,私は馬の動きについていけず,落馬。数名も落馬をするとともに,放馬した馬につられてまたまた落馬へと...。頭数も少なかったので,何とかおさまりがついたのですが,もし数千頭もいるトレセン内で起こってしまったら...。人馬共に危険なことになっていたのは,間違いないでしょう。

 そして,今もなお続く余震に対しては,徐々に馬自身も慣れていっているとのことで,パニックにはなっていないようです。このような状況となり,調教師の方の中には,「不安な気持ちや怖さもあると思うけど,まず傍にいる人間が動揺してしまうと,それが馬にも伝わってしまうので,なるべく冷静な態度でいてほしい」と,スタッフに声をかけるケースもあるようです。

 確かに繊細な生き物である馬にとって,いつもと違う状況というのは,ストレスを感じ,精神的なダメージへと繋がります。実は,栗東に滞在をしている馬の中にも,この変化に気づいていると思われる仔が存在します。というのも,普段ラジオを耳にして過ごしている馬たちの中には,地震直後から不思議な表情でラジオをジッと見つめている馬たちも少なくなかったようなのです。もちろん,地震や津波,原発の問題を把握しているというわけではなく,ラジオから聞こえる音のトーンが,いつもとは明らかに違うことに,疑問を持ってのことなのでしょう。

 もちろん私たち人間も,連日報道される,あまりにも悲惨な光景に,目を向けることすらできなくなり心が痛むばかりですが,その一方で,日本中の人々が心を一つにする姿も...。神様によって,生かされている人間。その人間がすべきこと,私自身もきちんと向き合わなければならないと思いました。

 とにかく今後,復興はもちろんのこと,被災された方々の心が,少しでも癒されることを願うばかりです。
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