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第52回 競走馬に必要なのは対話力?!~ダービー出走馬の騎手・厩務員の実績に思う~

2014.07.15
 早いもので、上半期の競馬も終わりを告げようとしています。現時点で残すGⅠは宝塚記念のみ。
 注目の1頭ゴールドシップは、今年のダービージョッキー横山典弘騎手との初コンビが決まり、その手綱捌きに視線がそそがれていますが、2週前追い切りに初めて跨った横山騎手は、「クセ馬と呼ばれるこれまでの馬とはタイプが違う。とにかく我が強い。この馬は自分がどうこうしようと思う事が間違い。今日は、お願いします、お願いしますという気持ちで乗っていたよ」と話され、レースまでに3回跨る予定でいるようですが、「当日の気持ち次第だと思う」と、あくまでも馬の心を尊重し、その思いに寄り添う形となりそう。

 よく馬の世界では、乗り手と馬との主従関係をしっかりさせた方が良いと言われ、私が馬に乗り始めた頃、「ホソエ、馬になめられるな。思いっきり叩くなり蹴るなりして、いうことを聞かせろ」と何度も怒鳴られたものです。

 よってその時は、脚や鞭を使って馬を従わせるように奮闘したものですが、馬の一馬力にはかなわず、暴走や振り落とされてばかりでした。すると「ホソエ、力じゃない。タイミングだ!」と...。

 その横で子供の頃から乗馬を嗜んできた同期は、意のままに馬をコントロール。見ていてその違いは分かれども、どうやったら巧みに馬をコントロールできるのか?は、いまだ分からずじまいですし、競走馬の調教に絶対的な服従を主とする馬術が必要か否かも正直分からないところも...。

 というのも、このゴールドシップを見ていると、乗り手によって走ることに対する意識の違いがハッキリと見受けられ、どちらかというと、ゴールドシップを'主'とした方が前向きな反応を示しているように感じるのです。

 上手く表現できないのですが、鞭や巧みな扶助操作を使って力ずくでコントロールしようと上に立つのではなく、一緒の感覚にどれだけなれるか?気持ちをどこまで汲んであげることができるか?騎乗技術云々ということよりも、対話力が求められているような...。

 それだけに、「レース当日になってみないと分からない」と口にされた横山騎手とのコンビが、よりいっそう楽しみとなりましたし、仮に今回すぐに結果がでなかったとしても、長いスパンでみてみたいとも感じました。

 さて話は変わり、2014年の日本ダービーも終わりましたが、振り返ってみると17頭の出走馬中、なんと半分近い馬が、これまでGⅠ馬を担当されてきた厩務員の方々。しかも中には1人で2頭出走した方や、過去ダービーを制した方も2人存在しており、これは単なる偶然ではないようにも...。もちろん実績があるからこそ調教師も期待馬を託すとは思うのですが、成長途上の若駒を、勝ち進みながら、なおかつ無事にダービーへと送りだすことは非常に難しいこと。やはり日々のケアや調教内容など、何かがあるのでしょうね。

 そして今回、直前で出走回避となったウインフルブルームを担当する小久保助手にとっては、初のダービー参戦となる予定だっただけに、さぞかし悔しい思いをされているだろうと感じ、馬の状態も兼ねていきさつを伺いに後日厩舎へと足を運ぶと、「かなり痛みがあったので、無理に出走させていたら、レース中、もしくはレース後が心配なことになっていたかもしれないです...。回避した判断に本当にホッとしています。またこの決断が秋に良い方向へと結びつくと思いますし、そうなるようにしていきたい」と、大きなチャンスを前にしても、愛馬の状態を第一に考える姿に、ウインフルブルームの秋以降の走りが今まで以上に楽しみとなりましたし、まだこの世界に入って2年目とは思えない今回の姿勢に、小久保助手が今後出逢うであろう担当馬たちに非常に興味が注がれるものでした。

 それでは皆さん、また来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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