JBIS-サーチ

国内最大級の競馬情報データベース

第72回 温故知新~競馬サークルに根付き始めた女性達~

2016.03.16
 この原稿が皆さんのお手元に届く頃には、今年の新人騎手がデビューして2週ほどが経っている頃なのでしょう。
 6人は無事にデビューを果たしているのでしょうか?なかには初勝利を挙げた新人もいるのかな?と様々な想像をします。

 今年は16年振りの女性騎手誕生とあり、各メディアで話題となっており、卒業生兼メディアに携わらせていただいている現状から、様々な局から、電話でのインタビューを受けました。

 その際、必ず出てくる質問は、「体力的に、やはり女性は劣りますか?」「女性で得したこと、損したことは?」と。正直なところ性別に関する質問は、あまりにも抽象的過ぎて、本当に難しく思えます。

 もちろん男女の違いはあるのは当然ですが、個々の違いや、個々の問題、また個々の考えもあるだけに、何を答えていいのか?悩むところもありました。

 ただこれまでに6人卒業し、騎手免許を返上したわけですが、同期の増沢由貴子ちゃんや、後輩となる西原玲奈ちゃんは調教助手として日々調教に跨り、競馬に携わっていますし、1期下の押田純子ちゃんは清水久詞調教師の奥さんとなり、厩舎が忙しい時は寝ワラあげを手伝うなどの内助の功としてサポート。

 結婚を機に競馬の世界を離れはしましたが、板倉真由子ちゃんは、引退後は持ち乗り助手として、数々の馬を担当し、いくつもの勝利を収めました。

 そう考えると、騎手としての生命は短かったかもしれませんが、それぞれに競馬サークルに根付き、繋がっているところがあります。

 また女性厩務員さん方もそう。結婚後も、そして出産後も現場に戻り、仕事を続けている方も多く存在します。

 例えば、競輪選手を旦那さんに持つ鮫島厩舎所属の金山持ち乗り助手においては、旦那さまが広島県から滋賀県に移籍をし、トレセン近くに家を構えていらっしゃいます。

 また旦那さんが調教師として開業をしたことを機に職場を離れた女性厩務員さんは、「やっぱり馬の傍が良い」と、ヘルパーとして他厩舎のお手伝いに入り、現場復帰されている方も。

 そう考えると、こんにちにおける競馬サークルは、女性の数が増えただけでなく、息の長い形で現場に携わる方や、職場同士での結婚など、女性がその場に根付き、一昔前のような特別な存在で扱われるようなことは少なくなっている気がします。

 こうした自然な状態で過ごせる環境に変化したことが非常に大事であり、今後、競馬サークルに入ってくる女性がより働きやすい職場となっていくのでしょう。

 考えてみれば私たち12期生女性3人も、初の女性騎手としてJRAからデビューさせてもらったわけですが、それ以前に門戸を叩き受験すらできなかった女性、また1期上の女性騎手候補生3人の退学という背景もあって、なんとしてでも12期生の私達は無事にデビューさせたいとする機運も高まっていた気がします。

 そう思うと、道のなかったところに道が作られる女性の歴史というのは、本当に多くの人の歩みが繋がってのものなのだなぁ~と再認識されるとともに、私自身は初というポイントの上に立たせてもらったことへの感謝と、なかなか繋げることのできなかった申し訳なさの両方を今、感じています。

 少し話はそれるのですが、朝ドラの「あさが来た」の主人公である広岡浅子さんの物語を見ていると、共通する部分や、当時の私が知っておきたかったこと認識しておきたかったことなどが山ほど感じ取られ、温故知新が今の私のテーマとなっており、今後、あらゆる分野でパイオニアとなった女性の歴史を調べてみたいと興味がわいています。

 それではまた来月、お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
トップへ