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第74回 ブランド力とは~働く1人1人の意識~

2016.05.19
 毎週末、関西と関東を新幹線で移動する私にとっての毎月の楽しみとなっている1つが、車内誌「ひととき」に掲載されている「この熱き人々」を読むこととなっています。あらゆる分野で活躍する方を特集したコラムなのですが、その聞き手兼書き手となっているのが、「気がつけば騎手の女房」の吉永みち子氏。人物の歩み・言葉・思い・繋がりを、さまざまな角度から紐解き、苦悩・挫折・改革・変化を表現。読んでいる時は心に響き、読み終わった後には心に残るのです。
 またクローズアップされる人々が、皆、職人気質であり、1つ1つを積み重ねた上で成り得、そして現在も進んでおり、人が生きる上、仕事をする上で大切なことを教えてくれているようにも思います。

 先月は、糸づくりにこだわった佐藤繊維の佐藤正樹氏の歩みだったのですが、若い頃に訪れたイタリアの紡績工場見学で職人たちは、糸を作っているとは言わず、「ここで世界ファッションの元を作っている」と誇らしげに言う姿を目の当たりにしたことで、日本の物作りにおける根本的な違いに気づかされるのです。

 そしてその数年後、どこにもない糸作りにこだわり開発した結果、世界のバイヤーに認められ、ある日、ニナ・リッチから「オバマ大統領の就任式でミッシェル夫人が着ていたカーディガンは、あなたの糸で編んだものです」との感謝のメールが届くことに。

 そのことに、苦労して世に出した糸が生かされた喜びを感じるとともに、糸を作った者にまで感謝を伝えるブランドの姿勢に感動したと語るのです。

 ニナ・リッチと言えば、世界的に有名なブランドですが、長きにわたりブランドが確立される要因は、作品がどのような経緯で作られているか?その根本を見失わず、携わる人々への感謝の思いを大切にしているからなのだと気づかされるものでした。

 少し話は変わるのですが、東京競馬場での私の憩いの場は救護所。競馬好きのドクターや、騎手の心理面にまで気を配っている看護師さんと会話をするうちに、プライベートでも食事をする仲になったのですが、その際に連れて行ってもらった六本木のお寿司やさんには、隅の壁下の目立たないところに、50名近くの名前が書かれていたのです。

 伺うと、このお店を作るに当たって携わってくれた設計士さんや左官屋さん、大工さん、そして寿司職人として自分を育ててくれた師匠の名前とのこと。大将の心根を感じるものでしたし、なんとそのようにしたいと思ったきっかけは、これまた世界的に有名なブランドであるGUCCIの銀座本店で見たプレートが始まりだったそうです。

 ブランドとは、ブランドの名が主役なのではなく、そこに携わる人々がブランドであり、それがブランド力なのだと気づかされるものでしたし、馬作りや飲食店・服屋さん・美容院でもそうですが、どんなに素晴らしい食材や素材があろうとも、結局は、そこで携わる人がどうなのか?そこなのでしょう。

 そんなことを感じながら中山競馬場へと足を運び観戦した皐月賞。勝利をしたのは、3強ではなく、共同通信杯後は皐月賞に絞り、在厩で臨んだ二ノ宮厩舎のディーマジェスティでした。そして勝負服はホエールキャプチャでお馴染みの嶋田オーナー、蛯名騎手コンビ。担当は、レインボーダリアなどを手掛けた島田厩務員という背景により深く、そのことを考えさせられる皐月賞の結果となりました。

 それではまた来月、お目にかかりましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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