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第75回 ダービーを間近に思う~若駒育ては子育てのお手本~

2016.06.15
 このコラムが皆さんのお手元に届く頃には、2016年の日本ダービー馬も決まり、新たな幕開けとなる2歳戦もスタートしているのでしょう。
 この時期は、(あ~ダービーが終わっちゃったのか...)という寂しさと、心機一転される清々しさもあり、何だか複雑。さぁどの馬がダービー馬となっているのか?は現時点では分かりませんが、終わってみれば、このダービーだけは決してマグレや運だけで勝てるレースではなく、なるべき馬、なるべき調教師もしくは、なるべき騎手、なるべき厩舎員だったのかな...と、妙に納得させられるものでもありますし、納得できる人馬であってほしいと唯一願ってしまうレースでもあります。

 そして、かれこれ20年近く取材をしていて最も印象深いのが、3歳という成長途上の若駒を育てていく上で自問自答を繰り返している作り手の考え方や、圧し掛かるプレッシャーに自分自身が浮き足立たないように自己コントロールをされている担当者の姿です。

 例えば今回においてのマカヒキでは、「賢い馬で何でも吸収していく。だから、全てを要求したくなるけど、そこをあえて体や気持ちと相談しながら、今はここまでと自分に言い聞かせながら進めているし、初めての重賞出走の時は、装鞍所で心臓がドキドキ・バクバクしている自分に気づいて、(あ、こんなんではいけない。馬に悟られちゃう。平常心・平常心)と、これまた自分に言い聞かせながらでしたよ」と。私自身は持ち乗り助手を経験したことがないので、1番長く馬と接する方々のプレッシャーや、成長段階を考えながらの馬づくりは分かりませんが、息子を持ったことで似た感覚となり、以前に増してその気持ちを理解できると共に、非常に我が子を育てる上でのお手本となっています。

 現在、2歳8ヵ月となり、様々な言葉を覚え、通常の会話ができるまでになったことで、その成長ぶりがより認識できるようになりました。歌を聴けば、すぐに歌詞を覚え歌ってしまいますし、携帯操作もお手の物。音声から検索をし、見たい動画を見、今では大好きな数字は100近くまで日本語と英語で言ってしまうのだから、こちらがビックリ。

 オギャーと泣くことしかできなかった子が、一気に吸収をしていく姿には、親の側が楽しくなってしまいますし、スポンジのように体得していく姿に、今のうちに何でも習わせたい、覚えさせた方があとあと楽なのでは?と考えてしまいがちですが、馬を見てきて感じるのが、早いうちに形だけを作ってしまう作業や要求し過ぎてしまうと、結果、故障や気持ちを萎えさせる方向へと繋がり、逆に成長を妨げる要因にもなってしまう気がしてならないのです。

 畑もそうですよね。基盤は土作り。一夜でできるものではなく、何度も何度も耕し、酸素を入れ、異物を取り除き、微生物を多く含ませることで、根付きがよくなり立派な食物が育つ結果に。

 となると、結局は育てる「人」次第。ママとなってまだ3年弱ですが、馬から学んだことを意識し、現時点では、過度な期待、要求、強要はしないように努め、いろんなことに興味を抱き楽しんで過ごしてくれればいいなと、見守っています。とは言え馬の世界は結果を残してこそですし、クラシックは一生に一度ゆえ、そのあたりが非常に難しいものですし、ダービー馬となって以降、息長く結果を残すことは、ダービー馬の称号も加わるだけに、これまた難しさも加わる気がします。

 競馬関係者にとってダービーは最大目標でもありますが、競走馬人生としての最後ではないだけに、ダービー馬となった後が、今まで以上に、より携わる人が試される始まりなのかもしれないと、近年では、そのように感じています。

 皆さんにとっての今年のダービーは、いかがだったのでしょうか?
 それではまた来月、お逢いしましょう。
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