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第94回 勢い増す外国人騎手の活躍~その背景にあるものとは~

2018.01.11
 明けましておめでとうございます。
 年末・年始、いかがお過ごしですか?

 それにしても昨年の秋競馬は、外国人騎手の活躍が際立つものでしたね。

 春同様にM.デムーロ騎手のスプリンターズS制覇から始まったGⅠ戦線、この原稿入稿前までに行われた8つのGⅠのうち、秋の天皇賞でのキタサンブラックの武豊騎手をのぞいては、皆、外国人騎手。

 中でも衝撃的だったのが、ダートGⅠチャンピオンズカップでのムーア騎手。ゲートに課題あり、折り合いに難しさありのゴールドドリームを、最小限の遅れに留めてのスタート後、プッシュしてポジションを取りにいき、しかもその後、いとも簡単に折り合いをつけてしまうのだから、本当に凄いの一言。

 当日私はゲート裏で一連の流れを見ていたのですが、返し馬を終えての馬の表情が、鞍上の余裕が伝わっているのか?堂々としており、なおかつゲート内で他馬が暴れた際に、つられそうになりかけたところをムーア騎手が手綱で一瞬押さえつけると、その後は人馬共に何事もなかったかのような姿で駐立。

 しかも初めてコンビを組んだというのに、馬とのこのやりとり。凄過ぎました。

 一見すると、これが経験値によるもの、世界の名手だから可能なのだと安易に考えてしまいますが、これまで日本で騎乗する際、ムーア騎手は金曜日には必ず通訳を交えてのエージェントとのミーティングを設け、自分の騎乗馬のみならず、相手馬に関する情報など、こと細かく聞き出して議論。

 またこれは以前に牧場関係者の方から聞いた話なのですが、ムーア騎手が牧場に足を運んだ際は必ず、その馬に携わる人の意見を求めるとのこと。それが馬に乗り始めたばかりの人であっても...。これは私の憶測ですが、普段の馬の様子や、どんな人が触れているのか?あらゆる角度から情報を取り入れ、分析されているのでしょう。

 現に私自身のもとにもムーア騎手の側近者から、栗東馬については、その担当の人がどう馬を感じているのか?状態はどうなのか?など、取材した内容を聞かれることも度々。

 またジャパンカップを制したシュヴァルグランのボウマン騎手においても、追い切り後に厩舎スタッフを交えての話し合いが行われ、友道厩舎のスタッフの1人は、「自分たちが普段感じていることを全部話せた。競馬はチーム力だから、本当に良い形でレースに挑める」と、満足気な表情で語り、「残念ながら、こういった状況を作り出せるのは外国人騎手なんだよね」とも。

 よって最近は現場からも外国人騎手への依頼を望む声は増えており、その背景には、立場や職種に関係なく、1頭の馬を取り巻く1人1人が共にホースマンとして自然に意見交換できる在り方があるようにも...。

 その一方で、これは私自身が競馬の世界に身を置き、長年日本のサークル内で感じてきたことでもあるのですが、同じ目的を持つ者同士なのに、職種によって色分けされ、互いが互いを理解できないような関係性がいつのまにか構築され、その傾向が近年の騎手のフリー化やエージェント制度の導入により、益々広がっているように思えてならないのです。

 特に関西は、関東よりもその傾向が強いようにも...。近いからこそ話し合えないのか?近いからこそ、気を遣ってしまうのか?その要因は分かりませんが、せっかく日本語で会話ができ、朝の仕事場で顔をあわせ、長年知っている者同士という、言ってみれば日本人騎手として外国人騎手に立ち向かう上での1番の武器となるべきものが、今や外国人騎手ならば可能と思わせる状況に。

 そういった意味を含めても2018年は、益々外国人騎手の活躍が拡大していくように感じます。

 それではまた来月、お会いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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