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第96回 菅原隆一騎手~1鞍・1勝の重みを感じて~

2018.03.16
 先月、ローレルクラブの新年会のパーティーの司会を依頼され、会員の皆様、馬を提供されている牧場関係者の方々、関東の調教師や騎手の皆さんと数時間ではありましたが、共に過ごすことができました。
 その際、予定には入っていなかった1人の騎手が、「ホソエさん、今日、競馬場で声をかけて頂け、急ですがお邪魔しました」と、騎手9年目を迎える菅原隆一騎手が司会台の私のもとへときてくれました。

 その後、1人1人の騎手を壇上に迎えてのトークの際には、「僕は勝利から遠ざかって騎乗チャンスも少なくなっている状況ですが、その分、1頭にかける思いは強く、1勝の重みは誰よりも分かっています。よろしく御願いします」と挨拶。

 普段関東ということもあり、これまで菅原騎手と話をしたことはありませんでしたが、年間を通して勝ち星が挙げられない年もあり、競馬開催日に競馬場に姿がない日も。

 その状況は私の騎手時代と重なり、レース当日、多くの騎手が早めに調教を切り上げ競馬場へと向かう中、競馬が始まっている時間にトレセンで過ごすことの悔しさ辛さを、菅原騎手も感じているのだろうな~と察するところも。

 しかも今回のような関係者が揃うパーティーともなれば、招待をされながらも、胸の内は、(華やかなパーティーに自分が本当に行っていいのだろうか?)とか、(行っても居場所が...)(頑張ってる?と声をかけられそうで恥ずかしいな...)という気持ちとなり、私自身の騎手時代は足が遠のくか、お邪魔をしても隅で下を向いている状況でした。

 それを菅原騎手は、自らの状況を客観的に捉えるとともに、いま騎乗に際して感じている自分の思いを壇上で言葉にできる姿には、心底立派な青年だと、心動かされるものがありました。

 騎手は、デビューしてからの数年で、乗れる・乗れないのイメージが周囲に確立される傾向にあり、それに伴って騎乗機会の差がうまれるように思えます。

 ましてやレースでの経験値こそがデビュー時の騎手にとって重要なファクターとなるだけに、騎乗チャンスが少ないということは、技術の面もそうですが、何よりも精神的な面でもハンデを背負う形となり、より苦しい状況に...。

 ましてやデビュー時、初勝利を挙げることのできなかった菅原騎手が歩いてきたこの8年は、メンタル面で耐えなければならないこと、涙すること、迷うこと、たくさんあったと思います。

 その果てに口にした、「1勝の重み」。その言葉の背景には、1つの騎乗に結びつくまでの日々の道のり長さと、そこで結果を出さなければならないという切実な危機感、そして、1鞍乗れることへの感謝の思いが詰まっているのではないでしょうか...。

 その歩みを物語るかのように、昨年は自身最多となる5勝をマーク。そして今年は新馬から騎乗をしているカグラヤルージュで2回の2着、そして2月25日には同馬と共に今年の初勝利をおさめました。

 騎手9年目の25歳、今年はどんな騎乗をし、どんな歩みをしていくのか?彼が感じる「1勝の重み」を、私も画面を通して見ていきたいという思いになりました。

 それでは皆さん、また来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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