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第105回 進化し続けるC.ルメール騎手~年齢と経験を重ねた上で広がりを持てるか~

2018.12.18
 早12月。秋競馬が開幕し、毎週末のようにGⅠレースが続く暮れは、ほんとに時間が経つのが早いものですね。
 この原稿が皆様のお手元に届く頃には、暮れの大一番・有馬記念の話題となっているのでしょうか...?

 それにしてもこの秋のGⅠレースにおけるクリストフ・ルメール騎手の活躍には、凄まじいものがありますね。

 振り返ると、よくぞ追い出しをあそこまで我慢できるなぁ~と思うレースでの勝因もあれば、逆に掛かりそうな馬でも果敢にポジションを取りにいった上で見事な折り合いをつけての勝利、はたまた狙いを定めたレース運びの末、ゴール手前でライバルをしとめる形など、実に様々な手綱捌き。

 しかもそのどれもがルメール騎手だからこそ勝てたと思える内容ばかりで、4週連続GⅠ勝利となったJBCスプリントの際には、「ルメールやばすぎ」とジョッキールームから声が飛び交うとともに、ある日本人騎手や来日当初からルメール騎手を見てきた方々も口を揃えて、「初来日の時よりはもちろんのこと、ここ数年でさらに巧くなっている」と、成長振りを指摘。

 確かに2005年のハーツクライでの有馬記念初GⅠ制覇後、2勝目となったGⅠ勝利は、3年後のリトルアマポーラでのエリザベス女王杯。

 この状況、今となっては不思議にも思えますが、つい先日、「なぜ大舞台で、あそこまで追い出しのタイミングを我慢できるのか?」という質問をルメール騎手に投げかけると、「それは、ラスト1ハロンまで追わない形も多いイギリスやフランス競馬での経験が活きている」と説明。また逆に日本の競馬においては、「日本はスロー・ミドル・ハイとゲートを開いてみないとペースが分からないところがあり、その臨機応変さが、海外で活かされることもある」と。結局のところは、全て経験ということなのでしょう。

 そしてその経験の1つ1つを、丁寧に吸収し体得していることがルメール騎手の最大の武器に思えます。

 ルメール騎手と言えば、もともと穏やかな性格で、人との調和を大事にし、総合力に長けたタイプ。JRAの騎手免許試験の際の日本語力においても、語学力を求める周囲の声に対して、「直ぐには無理です。毎日、毎日、ちょっとずつ上手くなっていきますから」と、話せないことを悲観することもなければ、エクスキューズするでもなく、前向きな視点で、自分が今後、どのように学び変化していけばいいのかを冷静に捉えていました。

 そして気づけば、今や流暢な日本語での勝利騎手インタビュー。ルメール騎手を見ていると、何事も1日では成し得ない、でもその1日1日の積み重ねの先にこそなし得るものがあり、その道のりこそが不動の力となることを示しているように感じます。

 騎手としてはもちろんですが、長い目で物事を考えられる頭の良さと冷静さは、人としても魅了されます。

 そして魅了と言えば、今、競馬界でトップに君臨するといっても過言ではないのが、牝馬アーモンドアイでしょう。

 ジャパンカップで見せた破格のタイムもさることながら、年齢とレースを重ねた中で、冷静さを増し、折り合い面の難しさが解消されているあたりに、厩舎と牧場の両陣営、そしてジョッキーの素晴しさを感じます。

 タラレバ話ではありますが、当初の様子からすると、1つでも違った選択をすれば、マイラーの馬になってもおかしくない状況下にもとれ、これはまさに、アーモンドアイを取り巻く人々の手腕あってこその結果。

 ルメール騎手話にも共通しますが、人も馬も大事なことは、年齢と経験を重ねた上で広がりを持てるかどうか?なのかもしれませんね。

 それでは皆さん、また来月お逢いしましょう。
 ホソジュンでしたぁ。
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