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第117回 欧州のトップジョッキーたちの日本競馬参戦 ~調教からレース、騎乗後までその経験を学ぶ好機~

2019.12.17
 この秋は、欧州のトップジョッキーが参戦しての日本競馬。日によっては一場の芝のレースの全てを外国人騎手が勝利することもあり、その手綱捌きや馬を動かす技に目を奪われます。
 と同時に馬上だけでなく、日本で過ごすにあたり、日本人関係者とのコミュニーケションを図ろうと、日本人の気持ちに寄り添った行動や対応をされているのが伝わります。

 特に今回、周囲から劇的な変化と称されるのが、スミヨン騎手。

 挨拶時も積極的に握手や笑みを浮かべ、一昔前のちょっぴり近寄りがたい空気感は消え去り、「まるで別人のよう」と、口にする方も多いのです。

 またそれだけでなく、調教においても動きに物足りなさや課題を感じると、翌週も跨りたいと申し出て、手を抜かない姿勢。

 そして追いきりを終えると、厩舎に足を運び、馬房での様子を見てから帰る日もあるようで、ある調教師の方は、「今は日本のジョッキーも厩舎に来ることが少なくなり、騎手が馬房前にいることに驚いてしまうのが現状。だからスタッフたちが、こういった行動により好感を持つし、乗ってもらいたいと思うよね」と。

 また先日のジャパンカップで、スワーヴリチャードを勝利に導いたマーフィー騎手の勝利騎手インタビューを目にした知人やメディアスタッフからは、「あのストレートな感情表現に加え、喜びと共に感謝の意を述べる姿が本当に気持ち良かった。全員とは言わないけど、日本人騎手も見習ってほしいところがあると感じた」と、厳しい声も耳にしました。

 またマーフィー騎手においては、あのディアドラでの海外GⅠ制覇の背景には、ディアドラの歩きや雰囲気、体の作りに惚れ、「好きなタイプだから是非乗ってみたい」と、依頼を受ける前に目を付け、マーフィー自身からアプローチをかけていたのです。

 そう、外国人騎手の多くは日頃から自分の騎乗馬だけでなく、他の馬も観察し、興味を抱いているのです。

 もちろん成績があってこそできる発言ではあるのですが、勝ち負け以上に馬そのものが好きで、どんな馬なのか?を探ろうとする気持ちも強いようにも。

 その証と感じるのが、例えば、マーフィー騎手が初めて、スワーヴリチャードの追いきりに跨った際に、「今日のコンタクトで、少しは友達になれたと思う」と表現。

 もちろん国民性や、馬と共に歩んできた歴史の違いもあるのかもしれませんが、競馬とは、生き物と共に歩み作り上げられるものであり、馬も感情をもった生き物であるということ、そして騎手は、その能力を最大限に発揮できるように導いてあげることが最も重要であると考えていると思えるのです。

 そして、そのために大切なことは、経験。

 今回久々に来日したデットーリ騎手との会話の中でも、レースにおける判断について、「全ては経験があるから」と話されていたのですが、弟分であるデムーロ騎手も、「僕はイギリスやフランスでの経験によって、馬場が重くなった時の乗り方を体得できた。だから日本で馬場が渋ると、任せてという気持ちになって、より自信がもてる。イタリア時代は、それがなかった」と。

 実は冒頭で述べた、芝全レースでの外国人勝利となった日も、不良馬場なのです。

 そんな中、JRA所属の若手騎手たちも将来を見据えて、富田暁騎手は現在オーストラリアで騎乗中ですし、近年、坂井瑠星騎手や西村淳也騎手、野中悠太郎騎手も海外経験を生かしての活躍振り。

 欧州の名手たちの参戦は、日本人騎手たちとって厳しい現実でもありますが、その一方で良い意味での刺激ともなっているように感じます。

 それでは皆さま、また来月お逢いしましょう。

 ホソジュンでしたぁ。

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