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川島ファミリーがゆく! 馬道ひとすじ

川島正行厩舎 川島ファミリーがゆく! 馬道ひとすじ

アジュディミツオー近況

 「最初に行った時は牧場以外なにもなかったなぁ」と川島正行調教師が振り返る北海道の馬産地に行ってきました。

 今回は函館から静内・新冠に入り、その後早来を周るコース。見慣れた風景とはいえ、「ここにお店ができてる!!」という発見もあります。静内ではそれまで最寄りが苫小牧だったという有名ファーストフード店が町の中心にオープン。10年ちょっと前まで国道沿いとはいえあのあたりはほとんど何もなかったと記憶していますので、川島正行調教師の「牧場以外は・・・」の言葉はその上を行く、まさに元祖馬産地!な風景なのでしょう。

 今回はアロースタッドで種牡馬入りしているアジュディミツオーの取材にも伺い、種牡馬としての貫禄とまだ現役で走れそうな覇気をたたえている姿に会うことができました。スタッドの方によると近年は比較的扱いやすい種牡馬が増えているそうですが、アジュディミツオーは「種牡馬らしい種牡馬ですね。最近では珍しいくらいにうるさく、元気いっぱいです」とのお話。危険な馬ということで細心の注意を払って接するため、油断を誘う大人しい馬よりもかえってこういうタイプの馬と関わってのケガの方が少ないそうです。

 写真撮影のために馬房から連れ出されたミツオーは、現役時代と変わらない気迫ある表情と堂々とした態度。パンと張った馬体は凛々しく、種牡馬として存在感の濃さも加わってより一層パワーアップした印象でした。こちらを見つめながら「おう!なにか用かい?」とでも言いそうな眼差しは見据えられると足が竦むような迫力。現役時代から人を見下すような闘志と誇りを持っている馬だと言われているミツオーですが、その姿は現役を退いた今もなお健在でした。

 馬がもしも言葉を話すことができたら、同じ牡馬でも自分のことを「僕」や「オレ」「ワシ」という馬がいそうですが、ミツオーの場合、間違っても「僕」というタイプではなさそう。けれど、ふとした時にちょっとおちゃめな表情を見せることもあるのも魅力のひとつ。いわゆる、"ギャップ"にきゅん!という心理かも知れませんね。実際、撮影後に厩舎に戻るミツオーは「あれ?牝馬は?牝馬いないよ!!」と文句を言っているかのようにプリプリした空気を漂わせながら何度もいななき、馬房に戻ると窓から顔を出して「はぁ・・・」というちょっと残念そうな後ろ姿。あくまで想像の範囲ですがそんな姿はほほえましい気もしました。

 輝かしい成績と併せて馬格の良さ、新種牡馬としての期待感もあり、今年の春は41頭に種付け。あと半年もすれば、馬産地のあちこちで元気に跳ねまわる当歳たちの姿が見られることでしょう。

 さて、春から夏の馬産地での取材はかわいい仔馬と母馬の姿に癒されることもしばしば。普段接している競走馬たちにも元気づけられますが、それとはまた違う、静かであたたかくおだやかな気持ちにさせてくれる風景です。川島正行調教師も「アニマルセラピー」で故郷・山武市をはじめとして地域に貢献したいという想いを持っているそうで、「競馬以外でも馬の素晴らしさをみなさんに知っていただきたいですね」と語っていました。そうえいば、馬の世話を取り入れた受刑者のための矯正教育「ホースプログラム」を実施している施設や、心身のリフレッシュ、運動機能の回復・強化といった効果を目的として馬との触れ合いを行っている施設もあると聞きました。競走馬はアスリートという立場のためそういった施設でセラピーを目的とする馬たちとは仕事の目的は違っていますが、レースで頑張る姿や馬房で顔を寄せてくれる仕草は、時として最強のサプリメント・心の栄養になることも少なくありません。それは馬が持っている素晴らしい力なのかも知れませんね。

 ちなみに、今回の北海道取材では新冠にある「にいかっぷホロシリ乗馬クラブ」さんにて、今年18歳になった名馬アブクマポーロで乗馬体験をさせていただきました。初心者でも気軽に安心して楽しめる環境。馬産地ならではの景色の美しさ。レースで人々を魅了し、サラブレッドの美しさ、気高さ、競馬の迫力やたくさんの魅力を伝えた馬たちが、場所と方法を変え、今は乗馬としてその背中で馬の素晴らしさを伝え続けていることはとても素敵なことだと思いました。

 さて、川島正行厩舎の近況はというと、8月25日に川島正太郎騎手がナイキグローリーで勝利し通算100勝を達成。8月27日のJRA認定2歳新馬戦ではバランスオブゲーム産駒のリアライズブラボーが快勝。一方で、8歳のベテラン馬・スマートパイレーツが約11カ月ぶりのレースで勝利しここ10戦を9勝2着1回としています。また船橋競馬場では11月3日のJBCに向けての第一期工事区域が完成。明るくリニューアルした場内は必見。さあ、いよいよ競馬の祭典に向けての秋が始まります。