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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第127回 『馬力本願プロジェクト』

 パソコンでFacebookを開いたところ、Messageを通してPDFのファイルが届いていた。

 送り主は新ひだか町の地域おこし協力隊で、「馬力本願プロジェクト」を運営している糸井郁美さん。そのPDFには「ひだかうまキッズ探検隊」の年間スケジュールが書かれていたのだが、企画内容を見て驚かされた。

 第1回は「馬産地の歴史を見に行こう」とのことで、北海道大学静内研究牧場での講義。第2回の「馬を見て・ふれて・知ろう」では、新ひだか町の三石にあるMKRanchにて、実際に牧場に赴いての体験講座が行われる運びとなっているのだが、なんと、第3回の「生産牧場ってどんなところ」では、マツリダゴッホ、スマートファルコン、サウンドトゥルーといったGⅠ馬を送り出した岡田スタッドへ訪問。しかも講師となっているのは、代表の岡田牧雄氏と書かれている。即座に、「牧雄さんのお話にも興味がありますが、他も物凄い企画ばかりですね!」とのMessageを糸井さんへと返す。糸井さんもその企画に手応えを感じていたのか、「中々面白い内容となっております。というか、全部の探検が村本さんにとって面白い内容になっています!笑っ」と記事で取り上げてくれることを、待ち望んでいるかのようなMessageを返してくれた。

 糸井さんとの交流はFacebook内において、「ひだかうまキッズ探検隊の記事を取り上げていただけませんか?」とのMessageをもらったことに始まる。

 その企画とは、ひだかうまキッズ探検隊の子供たちが、ホッカイドウ競馬内の田中淳司厩舎を訪問するといった内容だった。残念ながら別の取材が入っていた自分は、BNN(馬産地ニュースネットワーク。詳しくは第122回のコラムを参照)の情報網を駆使して、違う特派員に取材をお願いした。

 明くる日にふるさと案内所の馬産地ニュースとして取り上げられたその記事を見てみると、田中淳司調教師と子供たちとの楽しげな交流が、記事だけでなく写真を通しても伝わってきた。

 その記事の中では、厩舎見学の後に田中淳司調教師だけでなく、厩舎に所属する岩橋勇二騎手と落合玄太騎手を囲んでのインタビューも行われたと書いてあったが、きっと子供たちの中には馬の仕事だけでなく、ゆくゆくは競馬マスコミとしての未来像も描けたに違いない(希望的な観測ですが...)。

 記事がアップされたあと、再度糸井さんには、取材に行けなかったことを詫びるとともに、改めてスケジュールを送ってくださいとお願いしたのが、送られて来たPDFとなったのだが、なぜにこんな凄い内容をこれまで教えてくれなかったのか!(そして、自分は気付かなかったのか)との思いがした。「ひだかうまキッズ」の母体となっている、「新ひだか町馬力本願プロジェクト」は今年で4年目を迎える。その中心人物というのか、現在、一人でプロジェクトを動かしているのが、他でもない糸井さんである。

 糸井さんが新ひだか町地域おこし協力隊として着任したのは2016年の11月。それまでは、札幌でスイミングクラブのインストラクターや、パソコンのインストラクターなどの仕事をしてきた。

 そんな糸井さんが仕事の合間に続けてきたのが乗馬だった。札幌競馬場の乗馬センターで行われている「初心者乗馬クラス」に申し込んだ糸井さんは、一気に乗馬の魅力に引き込まれ、初心者乗馬クラスの終了後にはサポートスタッフとして、乗馬センターへと通い続けた。「乗馬をするまで、競馬のことはほとんど知りませんでした。ただ普段、乗馬で跨がっていた馬が開催中は誘導馬となっていることを知ったのですが、その馬こそがロングキングダムでした」(糸井さん)

 温厚な性格をしていたロングキングダムは、乗馬としても優秀な馬であったが、ある日の朝、糸井さんの元に思いがけない連絡が届く。「ロングキングダムが亡くなったと聞かされました。その前日まで元気でしたし、手入れもしていたのにどうして?と信じられませんでした」(糸井さん)

 しかもその頃、糸井さんは人生の転機を迎えていた。ロングキングダムとの出会いや乗馬を通して、馬に携わる仕事に興味が出てきていた糸井さんは、その溢れ出る思いを何の面識も無かった角居勝彦調教師への手紙としてしたためる。

 「角居先生からの手紙が返ってきたのが、ちょうど、ロングキングダムが亡くなった日でした。自分の後押しをしてくれているようなその手紙を見て、悲しみに浸っているのではなく、馬の世界に興味を持たせてくれたロングキングダムのためにも、自分が行動しなければとの思いに変わりました」(糸井さん)